サンライズ出雲の寝台券購入に30分…JRの発券システムが致命的に遅れてる
【2019年9月追記】サンライズ瀬戸・出雲もえきねっと及びe5489での予約に対応しつつあるようです。
参照:サンライズ瀬戸・出雲がえきねっと&e5489に対応。東西ネット予約が最後の夜行列車を救う?
先月出雲大社へ行くのにサンライズ出雲に乗った記事を上げましたが、これには後日談ならぬ前日談がありましたので紹介します。
参考:サンライズ出雲/瀬戸に今こそ乗りたい理由。時代が追い風に!?
結論から言うとこのタイトル通り。10月のある日の朝、出勤前に駅のみどりの窓口に行くと窓口は開いているのが1つ。そこに1人応対中で待ち列が3人居たのでその後ろに並びました。朝10時前なので1ヵ月後の列車の新規予約はまだ、時期的に定期券購入も少ないはずです。ところが数分後に1人きっぷを購入しただけで次の1人の応対に延々20分以上、結局30分経っても列は動かず時間の都合であきらめ帰宅途中に買うことになりました。
- 券売機対応ができるか選別している
- 自動券売機で予約できる列車が少ない
- ウェブサイトでの予約はもっと絶望的
- 今なお現役50年以上前のシステム
- 欧州ではウェブサイト第一の理由
- 「自動化」と「割引」そして業界全体の連携強化を
1.券売機対応ができるか選別している
今JRのみどりの窓口では有人窓口の隣に指定席自動券売機を設置しており、列ができると係員が来て自動券売機で買える内容であれば券売機に誘導しています。都内の駅自動券売機で買えるのは新幹線や特急(中央線、常磐線、成田空港方面等)使っていける場所への片道もしくは往復です。なので大体のケースは既に自動券売機で対応できるようになっています。
ただ今回は1件目の客が新幹線と特急の乗り継ぎ周遊であったこと、2件目は株主優待での購入、3件目がジパング倶楽部会員で新幹線乗車区間を変更したい(ルール上1回までは無料で可能)が、それなら乗車券より大人の休日倶楽部パスのほうが安いので指定席情報も移したい(大人の休日倶楽部パスは指定席を6回まで無料で取れる。ルール上は問題ないしこの場合のほうが安上がりなケースも多い)、4件目は1ヵ月後のいわゆる「10時打ち」の予約でした。いずれも現行の指定席券売機やウェブサイトではできないものです。
2.自動券売機で予約できる列車が少ない
指定席自動券売機で指定席の購入ができる列車は増えてきました。都内の券売機の場合東京からの新幹線/特急は買えますし、新幹線や特急の乗り継ぎも購入可能になりました。
ただ特急ではない臨時列車の指定席は購入できません。臨時とはいえ毎月定期的に運行しているリゾートしらかみやSLばんえつ物語あたりは後述のえきねっとで予約し券売機で受取る方法はありますが券売機での検索はできません。さらにJR各社間をまたぐ在来線特急や寝台列車の購入はできません。
また指定席券売機での指定席発売開始は1ヶ月前の10時10分から。人気列車を発売開始と同時に入手したいなら指定席券売機など使えませんね。
3.ウェブサイトでの予約はもっと絶望的
ウェブサイトを使った買い物や予約が急激に普及しつつある中で、日本の鉄道はもう完全に乗り遅れているといわざるを得ません。デザインや運行本数、技術面、観光資源では世界最高峰にあるはずなのに何とも勿体無いです。
かろうじて一番まともなのがJR東日本のえきねっと。JR東日本とJR北海道を中心に新幹線、特急、そして臨時快速列車の指定席が予約できますしクレジットカードとeメールアドレスがあれば会員登録もできます。
しかしきっぷの受取場所が原則JR東日本の駅であることやその受取時間が列車の時間とは関係なく5:30~23:00に固定されているのがネックです。但し受取りは乗車当日でなくてもいいのはせめてもの救いです。
そもそもインターネットが24時間ではないってどうなの?という話です。毎日23:40~翌0:20と1:40~5:30が検索/予約/変更/払い戻しができません。楽天やアマゾンが毎晩閉店してたらこんなに皆が使うものになっていたかどうか・・・
また航空会社のウェブサイトが全世界でほぼ例外なくトップページ上部に予約検索フォームを置いているのに対し、えきねっとでさえ「予約」「ログイン」ボタンよりも上にキャンペーン広告が出たり、「予約」ボタンを押しても最初に出るのはJR東日本管内の新幹線/特急だけで、それ以外は乗車駅と降車駅を入力して検索という一歩手間の掛かる仕組みです。常時ログインにしておけば改善されますが。
4.今なお現役50年以上前のシステム
ここまで日本の鉄道の予約システムが中途半端に時代遅れなのは、原則的にMARS(マルス)という1960年代に開発された予約システムを、幾度のマイナーチェンジをしているとはいえ今も使っていることにありそうです。旧国鉄時代に開発された経緯からJR7社が共同出資するJRシステムが運営しています。このシステムが24時間運用や1ヶ月以上先の予約に対応していないこと、きっぷを販売した駅窓口に奨励金を払う慣習などからインターネット化、自動化の妨げになっていると考えられます。
航空会社が新規予約を受け付ける開始時間が深夜0時あるいは在宅率の高い19時くらいの夕方なのに対し、JRはちょうど1ヶ月前の朝10時という消費者の生活実態を考慮していないお役所体質なのも、この時代の産物なのかもしれません。予約開始に間に合わせたければ仕事や家事を休めて駅に行けと言うのは現代社会では通用しないでしょう。
あるいは駅には既に多数窓口があるから、鉄道は同一路線での(航空機や高速バスのような)価格競争はないからコスト意識が希薄だったとも言えるかもしれません。ただ近年は労働力不足や駅ナカの発展を考えると今後この流れが変わることは間違いないでしょう。
5.欧州ではウェブサイト第一の理由
一転してヨーロッパの長距離鉄道ではインターネットや自動券売機が主流です。EUの交通事業規制緩和で価格競争にさらされているのと、窓口の人間に比べて機械は外国語への対応が容易なので国外からのセールスに有利なのです。もちろんシェンゲン協定(≒国境廃止による渡航自由化)やユーロ通貨導入が後押ししていることも事実です。ゆえにインターネット限定の早期購入割引が充実していたり、同じきっぷでも窓口で買うと4€程度の手数料を上乗せされることもあります。また特にパリからドイツ西部が特にそうですが同一区間への複数社参入があるためフランス国鉄とドイツ鉄道での価格競争もあります。
ドイツ鉄道のトップページは言語選択、予約検索、セール情報、アカウント登録があります。2017年12月にリニューアルを予定しているフランス国鉄の予約ページも英仏海峡トンネルを越えるユーロスターもにたようなつくりです。このフォーマットは基本的に航空会社と同じです。実際日本語にこそ対応していないもののクレジットカードとeメールアドレスがあれば日本からでも予約できる優れものです。地元住民にも旅行者にも分かりやすいです。
ちなみにフランス国鉄やドイツ鉄道らが共同出資した主に欧州以外の利用者向けサイトもあります。こちらは若干手数料が上乗せされるものの日本語の情報が多く初心者にも使いやすいと思います。
6.「自動化」と「割引」そして業界の連携強化を
冒頭の窓口30分待ちの人達を非難するつもりはありませんし、実際自分で行程を組み立てていくのは楽しいと思います。ただ同じ効果(目的地と時間)なら安いほうがいいと考えるのは自然なことで、手間も人件費も掛からないけど品数も割引も乏しいインターネット予約よりも、品数豊富で株主優待割引とか学生割引も使える窓口予約だったら並んででも当然後者を選ぶはずです。
現在の日本の鉄道運賃ではウェブサイトで予約することが便利とは言えませんし、わざわざ窓口でなくウェブサイトを選ぶほど価格面や予約開始時期等にアドバンテージがあるわけでもありません。
えきねっと予約よりも窓口で株主優待を使ったほうが安かったりJR会社間を跨ぐとウェブサイト予約が使えなかったりと、必ずしもウェブサイトや自動券売機が最良とはいえない状態です。
航空会社では株主優待でもウェブサイトや自動発券機に対応させていますし、金融業界でもカメラ認証で郵送不要で本人確認ができているので学生割引や大人の休日会員あるいは訪日外国人の割引運賃を窓口だけで対応させる必要も無いわけです。
一方でJRの紙のきっぷは1回まで無料で変更できるという国鉄時代からのルールも考え物です。欧州の鉄道であれ航空会社であれ、そしてJRバスのインターネット割引でも事前購入割引は一切変更不可として無駄を省いて低価格化を進めています。勿論JRに比べ窓口が極端に少ないからこそ省力化を進めたい思惑もあるはずです。
しかし、だからといってみどりの窓口に余裕があるわけでもなく、よほど大きな駅を除けば窓口1つ2つでまわしているのが現状ですし、駅に駅員募集の求人が出ていることからも人手不足は目前に迫っているわけです。
ただ、既に都心部でsuica/PASMOの普及に伴い券売機や窓口が減少し人の流れの円滑化や商業地化、さらには運賃系統の異なる他社線への直通運転と新規需要開拓に成功していることを考えると、地方都市などへの長距離列車でも省力化、高効率化、日本社会全体の問題で言えば生産性向上は避けられなくなるでしょう。そしてそれは一社だけでは限界があり、PASMOやレールヨーロッパと同様に業界全体での連携が不可欠だと思います。
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