サンライズ瀬戸・出雲がえきねっと&e5489(個室も)に対応。東西ネット予約が最後の夜行列車を救う?
JR西日本のオンライン予約サービスe5489が2019年10月1日より、サンライズ瀬戸(東京~高松)とサンライズ出雲(東京~出雲市)の指定席車両ノビノビ座席の予約を受け付けると発表しました。そして2020年4月から個室寝台(シングル、ツイン、シングルツイン、シングルDX)の予約にも対応しました。
参考:寝台列車「サンライズ瀬戸・出雲」をe5489で予約する場合について
既にJR東日本のオンライン予約サービスえきねっとでも2019年7月からノビノビ座席限定で予約に対応しています。
1.サンライズ瀬戸・出雲とは

従来のブルートレインとは一転して朝のイメージ。所要時間は瀬戸で10時間弱、出雲で12時間程度。
従来機関車が客車を牽引する方式だった寝台特急の快適性向上と速達化のため1998年に登場したのがサンライズ瀬戸・出雲です。両者は東京~岡山は連結して運転され、特にサンライズ出雲は従来の山陰線経由から伯備線経由になったことから所要時間を1時間以上短縮しました。

ノビノビ座席は座席というよりブース。調光、空調、電源全部あり。
車内は電子ロック式の1人部屋や2人部屋の個室を基本として、指定席として販売されるノビノビ座席があります。
登場当時既に夜行列車は縮小傾向にあり、2016年の北海道新幹線開通に伴い急行はまなす(青森~札幌)が廃止されると、このサンライズ瀬戸・出雲が国内最後の定期夜行列車となりました。
2.最後の夜行列車に各方面から注目が集まった
では数十年続く夜行列車縮小の傾向の中、この列車の人気ぶりと今後の行方は気になるところです。筆者は過去2回利用しており、2017年の乗車は記事にしています。
参照:サンライズ出雲/瀬戸に今こそ乗りたい理由。時代が追い風に!?
この列車の魅力は夜出て寝て起きれば目的地に着くという夜行列車本来の魅力を、現代水準の快適性で味わえる点につきます。椅子ではなく全クラスフラットシートというのはバスにないメリットであり、手元に照明やコンセント、数は限られますがシャワーまである等かつての座席夜行とは比較にならないレベルです。
2000年代まで残っていた夜行列車といえば、古い車両につきっぱなしの照明、倒れない座席、見知らぬ人と相席、コンセントや収納がない、定時に到着できるかわからない等、昭和の頃と大差ない快適性のまま「放置」されて残っていた印象です。良かれと思ったのは往時をしのぶ鉄道ファンだけでしょう。それに比べれば雲泥の差です。
特に2010年代になってYouTube等の動画で個人の乗車レポートが多数投稿されるようになり、鉄道ファンに限らず知名度が一気に広がったとも言えます。旅行に精通した彼らも一様に「オンライン予約できないのが意外と面倒」と口にしているのが興味深いところ。最近は海外からの利用も多くみられるようです。
出雲市は10時前後の到着、19時前後の出発と若干タイトではありますが岡山や高松に限れば夜21~22時出発、朝6~7時の到着と無理のないスケジュールであり、新幹線や飛行機と比較しても現実的な選択肢でもあります。
3.オンライン予約に対応しなかった理由
1998年当時でも夜行列車はブラッシュアップが必要と考えられていたようですが、2000年代に始まったJR各社のネット予約サービスでは長らくサンライズ含め夜行列車は対応していませんでした。2017年の時点でも予約のために何度も窓口に並んだ経験があります。
参照:サンライズ出雲の寝台券購入に30分…JRの発券システムが致命的に遅れてる
背景には新幹線のように同じ区間に何往復も走っている区間のほうがシステム構築の費用対効果で有利だとの判断がありそうですが、
- 1日1往復では需要は圧倒的に少ない
- JRとしては新規開業や高速化の進む新幹線に特化したい
- 1日の定義を0時とするか終電とするか夜行列車特有の問題
- 指定席とは異なり寝台券はソロ、シングル、ツイン等に細分化されている
- 運賃は経路によって異なり特例も複数ある等システム化が難しい
- JR各社間をまたぐことから発券や異常時対応などルール統一化が難しい
- JR各社とも夜行列車縮小の意向がありシステム構築に消極的
以上の理由がありそうです。実際上野~秋田~青森の寝台特急あけぼのはノビノビ座席に似た指定席車両ゴロンとシートを導入し、低価格化も進めたにもかかわらずえきねっとに対応することなく2014年に廃止されていきました。
一方で定期運行は2009年に終了したものの、毎年臨時列車として繁忙期に運転されている快速ムーンライトながら(東京~大垣)は普通列車指定席としてえきねっとでも予約できます。
ただ2010年代になると既に航空券や高速バスはオンライン予約が主流となり、地方駅でも自動改札や自動券売機が主流となり、さすがにこの流れは無視できなくなります。既に指定席も定期券にも対応する券売機が進出した結果、JR各社も人件費や効率化のために窓口を縮小すると発表しています。
えきねっとやe5489が1日わずか1往復のサンライズの取り扱いに手を出したということはJR各社はこの列車の運行を当面継続するという意思表示でもあります。
4.課題はまだある「受け取り場所」と「使い勝手」
とはいえJRのネット予約には課題もあります。まず最初にえきねっともe5489も予約と言うより「きっぷの販売サイト」に過ぎず、そのきっぷを受け取れる駅が決まっている点です。

えきねっとの受け取りエリア。JR西日本は北陸新幹線絡みのきっぷに限られ、岡山、高松、出雲市駅では受け取れない。

e5489の受け取りエリア。首都圏は北陸新幹線絡みに限られ、東海道新幹線や東海道線(サンライズが該当)経由の場合東京駅や品川駅等JR東海窓口・券売機に限られる。
えきねっとは原則JR東日本とJR北海道エリアでしかきっぷを受け取れず、また購入時のクレジットカードが受け取り時に必要です。e5489も原則JR西日本・JR四国・JR九州エリアでの受け取りが必要ですが、例外的に東海道新幹線か東海道線を含む場合のみJR東海の窓口・券売機で受け取りが可能です。e5489で首都圏発を予約する場合JR東海窓口がカギになります。
またe5489はクレジットカードに限らずコンビニ払いも可能です。えきねっととe5489は北陸新幹線を含むルートでない限り互換性がほとんどないのです。

えきねっとの予約検索ページは自由入力ではなく路線をリストボックスから選択する方式。乗る列車が何線か分からないと使えない。
第二にウェブサイト自体が使いづらい点です。航空会社の予約サイトが「出発日」「出発地」「目的地」の3つがわかれば検索できる仕組みなのにくらべ、JR各社の「〇〇線」「〇〇号」を知らないと何もできない背景知識前提の仕組みは根本から変える必要があるでしょう。
対照的にJR東海のEX予約は東海道新幹線に特化しており時間帯や最安値の検索は容易です。一方在来線のネット予約は自前では持たず、えきねっと(予約のみで受け取り不可)かe5489(JR東海区間を含めば受け取り可能)に頼ることになります。
会社間の囲い込み競争はあるものの、貴重な夜行列車がオンラインの波のようやく乗れたのはひとまず安心と言えそうです。