サンライズ出雲/瀬戸に今こそ乗りたい理由。時代が追い風に!?
先日デビュー以来19年ぶりに東京駅から出雲市までサンライズ出雲に乗ってきました。1998年当時も最新鋭の寝台電車として話題になっていましたが、その魅力は今でも色褪せない、というか偶然か運命か別の形で変化してきたな、というのが正直な感想です。
- 本当に最後の定期夜行列車になった
- 夜の東京駅の優越感
- 全クラスがフルフラットの12時間
- 車内販売は飲み物とシャワー共に争奪戦
- 当時の想定と現代の客層の違い
- 朝の岡山駅でのイベント
- 激増した「県魅力度」
- 割引なし裏技なしの予約法
- 廃止騒動になる前に
1.本当に最後の定期夜行列車になった
今や夜行列車は縮小あるのみ。この流れはもう何十年変わっていなくて、豪華さで売っていた北斗星(上野~札幌)ですら消えてしまいました。辛うじてムーンライトながら(東京~大垣)が青春18きっぷの時期に何度か走るだけで、これも車両の老朽化であと何シーズン持つかというところ。JRも通勤路線の充実に力を入れ、1日1往復、あるいは季節運行のために予備の車両や人員を置いておくほど余裕は無くなったというのは確かです。余裕を置けば3泊50万の豪華列車しかないと。
2.夜の東京駅の優越感
夜22時の東京駅といえば家路を急ぐ通勤客で溢れかえっているはず。2015年には宇都宮/高崎方面にも直通し北も南も帰宅ラッシュなります。そんな中、見慣れない色の電車に大荷物(写真のスーツケースは機内持ち込み規格外なのですが)を持った旅行客が入っていくのは現実逃避にも似たある種の優越感を味わえます。混雑とも無縁です。
3.全クラスがフルフラットの12時間
末期の夜行列車の多くが安価な座席車を残していたのとは対照的にサンライズ両列車は個室寝台と指定席扱いのノビノビ座席(上写真)で構成されています。ノビノビ座席とは言っても椅子ではなく上下2段のフラットシートです。頭の部分にはプライバシースクリーンがあり、通路にはカーテンがあり、ブランケットがあり、そして冬は意外にも床暖房が入ります。これで高松まで10時間、出雲市まで12時間は余裕です。
これ、アメリカやヨーロッパまでのビジネスクラスの話じゃないですよ。でもそれに似た時間のすごし方を国内で出来てしまうのが何とも不思議だと思います。
4.車内販売は飲み物とシャワー共に争奪戦
反面飛行機と違い食事はなし、飲み物もお茶や水、コーラの自動販売機が何機かあるだけです。値段は130円前後と当時は高かったけれど今は普通ですね。この辺はタイムパラドックスを感じます。なので多くの乗客は食事は事前に済ませるか、コンビニでお酒を買い込んでロビーで晩酌するかです。自販機も在庫が不安です。
シャワールームはカード式で、最上級個室シングルデラックス客には1枚配布され、それ以外は車内の券売機でカードを320円で購入します。脱衣所含め結構広く、20年近く前の電車にしては快適です。ただ横浜出発後から混み始め、結局岡山を過ぎてから朝シャン。これも新鮮です。タオル持参ですがシャンプーとボディーソープがあるのは意外。
5.当時の想定と現代の客層の違い
これが結構面白いなと思ったところ。特にノビノビ座席は学生など若年層がメインと言われていた(明確なマーケットリサーチがあったとは思えないので)のに、実際には熟年リタイア層か欧米、アジアからのバッグパッカーにほぼ二分され、旅の上級者が選ぶ手段になっていたという不思議。というのも後述のようにチケットの入手が難しいので時間に余裕のある人(旅行期間の長さではなく出発日を選べるという意味で)でないとなかなか乗りにくいことが背景にあると思われます。ちなみに上写真、出雲市到着前なので既に降りて空席ができているだけです。
6.朝の岡山駅でのイベント
翌朝6時過ぎに岡山に到着。ここで前7両高松行きサンライズ瀬戸と後7両出雲市行きサンライズ出雲を切離します。この作業、珍しいのか結構見物人が集まります。
7.激増した「県魅力度」
この19年で大きく変わったと思われるのが列車の目的地である香川県、鳥取県、島根県の観光資源だと思います。東京の人間にとって以前はあまりイメージの無かった県だったのですが。
うどん県旅ネット(https://www.my-kagawa.jp/)
とっとり旅の生情報(http://www.tottori-guide.jp/)
しまね観光ナビ(http://www.kankou-shimane.com/)
うどん県、瀬戸内国際芸術祭、星取県、山陰海岸ジオパーク、出雲大社、松江城、石見銀山…インターネットを使った現地発PRが進んだこともあり、副次的にそれがテレビ等マスメディアで話題になるなどして色々なイメージが付きました。特に鳥取と島根なんてどっちがどっちだか状態なのは向こうも自覚しているようで、観光PRでは両県ともひらがな表記ですね。
中でも出雲大社、金持神社、金刀比羅宮といった聖地巡礼という旅の手法はここわずか数年で激増したような気がします。実際このサンライズは過去に繁忙期に広島や下関への臨時列車、サンライズ瀬戸の松山延長も行われていましたが、最近はサンライズ出雲の臨時増発やサンライズ瀬戸の琴平延長にシフトしています。つまり夜行列車としての需要は人口の多い広島や松山ではなく、非日常的な聖地にこそあるようです。
8.割引なし裏技なしの予約法
一方時代の流れに乗っていないのが列車の予約方法。インターネット予約全盛の時代に窓口でのみ発売、割引も学生や外国人等に限られる等かなり強気の販売でありながら、なかなか予約の取れない人気列車に。裏技など無く日程やクラスはある程度妥協して探すしかないようです。ただ航空券と違いキャンセルしても大した痛手が無いため直前に空席が出ることはあるとか。
値段は東京~出雲市のノビノビ座席利用で約16000円、一番高いシングルデラックスでも約28000円。ノビノビ座席が羽田~出雲のJAL先得といい勝負なので、実は快適性だけでなくコストパフォーマンスもいいことが解ります。
LCCやバスを凌ぐ快適性、効率性があることは確かです。成田~高松はジェットスターが片道1万以下で飛んでいますが狭い機内に押し込まれ手荷物料金を取られ空港でも延々歩かされるのに比べたら、寝ている間に移動できるサンライズのほうが時間でも空間でもバリューは大きいです。
9.廃止騒動になる前に
とはいえ登場から約20年。そろそろ車両更新の検討が始まってもおかしくないですし、実際同時期に登場したフレッシュひたち/ひたち/ときわは新車取替え、サンダーバードやソニックも更新工事がされています。乗務員や整備士のやりくりも相当な苦労があることは、航空業界のパイロット不足や飲食店の深夜営業縮小を見れば容易に想像がつきます。長距離路線である以上台風や大雪による気象リスクも大きいです。
一方JR東日本のえきねっとやJR西日本のe5489といったインターネット予約システムに対応していないのは、私鉄沿線在住など日常JRを利用しない人にも都合が悪いです。新幹線や大都市近郊の特急列車と違い自動券売機でも購入できません。
これらの条件が、消えていった数々の夜行列車の背景と何ら変わらないのです。むしろ窓口の削減や自動券売機への誘導といった省力化、あるいはホームドアや遅延情報アプリなどのシステム化は今までにない速度で進んでいます。乗れるうちに乗っておきたいものです。
乗る場合はPETボトルの水、アイマスクとネックピロー、モバイル電源が三種の神器として必要です。AC100Vコンセントは一部個室と通路にしかないので。
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価格:1,580円 |
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