新幹線eチケットはネット予約→Suicaインストールで2020年代のスタンダードに。やっと新幹線が時代に追いつく!
JR北海道、JR東日本、JR西日本の3社がインターネット予約サイトで新幹線の指定席や自由席を予約し、登録したSuica等ICカードで改札を通過できる新しい予約・改札サービス「新幹線eチケット」を2020年3月14日乗車分より導入すると発表しました。
参考:JR東日本「新たな新幹線IC乗車サービスの導入について(PDF)」
参考:JR東日本「新幹線eチケットサービスが始まります(PDF)」
- 北海道/東北/秋田/山形/上越/北陸新幹線で導入
- 予約はえきねっとかe5489から、駅での受け取り不要に
- ICカードは全国相互利用対象10種
- 東海道・山陽新幹線は独自に2017年秋に導入済み
- 悲願の複数名予約も最大6人まで可能に
- モバイルSuica特急券廃止で一本化
- 多くの駅で在来線乗り継ぎも容易に(私鉄も含む)
- 「乗車券」と「特急券」の境が事実上なくなる
- 「東京都区内」「仙台市内」扱いも事実上なくなる
- トクだ値からJRE POINT特典チケットまで新幹線eチケットに統一される
- 窓口も券売機も不要で地方インフラ維持に期待
1.北海道/東北/秋田/山形/上越/北陸新幹線で導入
対象路線は北海道/東北/秋田/山形/上越/北陸の6新幹線で、東京から北に向かう全ての新幹線です。既に全駅にSuica対応改札機が設置されていますが、現在のところモバイルSuicaや新幹線定期券等といったごく一部のユーザーに限られています。
2.予約はえきねっとかe5489から、駅での受け取り不要に
指定席でも自由席でもインターネット予約サイトでの事前購入が必要で、JR東日本のえきねっととJR西日本のe5489(東京~金沢のみ)から行います。
えきねっとは現在JR北海道とも提携し道内特急の予約も可能です。会員登録にはメールアドレスとクレジットカードが必要ですが、年会費は不要でほとんどのクレジットカードが登録できます。
e5489も同様にメールアドレスの登録が必要ですが、JR西日本が発行するJ-WESTカード限定の割引もあります(東海道山陽新幹線のEX-ICや関西地区の特急の割引等)。一方クレジット決済のほかにコンビニ決済も用意されており、家族間や若年層の利用には便利です。
駅での受け取りが不要になることから駅で券売機や改札機に並ぶ必要も無くなり、特に私鉄沿線民や早朝深夜の利用者にはメリットが一気に拡大しそうです。
3.ICカードは全国相互利用対象10種
予約後は紙のきっぷは発行されず、代わりにSuica、kitaca、ICOCA、PASMOといったICカードを登録しておき、それを改札機にタッチする形です。勿論モバイルSuicaやApple Payを利用したSuicaも使えます。

大宮駅新幹線改札内にある座席票発行機。ICカードをかざすと乗る列車と号車・座席番号がわかるし印刷も可能。
但し、乗車時に紙の控えがないことから座席番号の確認は難しそうです。座席の確認方法としては、
- えきねっとにログインし予約確認ページで見る
- 新幹線改札内の座席票発行機で調べる
の2通りがあります。前者は予約者でないと出来ない反面、複数人でも全員分がわかります。一方後者はICカードをタッチするだけでその人の乗る列車や発車時刻、号車、座席がすぐわかりますし、控えを印刷もできます。但し自由席の場合区間のみです。
4.東海道・山陽新幹線は独自に2017年秋に導入済み
一方でオンライン予約+チケットレス改札で先行するJR東海・西日本の東海道・山陽新幹線は2017年9月から同様の「スマートEX」を導入しています。
但しこちらはICカードの登録は任意であり、駅で紙のきっぷを受け取る方法も残されています。複数人で利用する場合はICカード改札を利用できず、きっぷ受取りが必要になります。
5.悲願の複数名予約も最大6人まで可能に
えきねっと・e5489を使った新しい予約システムでは登録したSuica等にインストールします。これは複数人でも利用可能ですが人数分のICカードが必要です。
現在モバイルsuica新幹線やスマートEXのICカード改札は会員1名のみの利用に限られていることから、家族旅行などで利便性は一気に向上しそうです。
6.モバイルSuica特急券廃止で一本化
一方でモバイルSuica特急券は2020年3月13日乗車分でサービス終了が発表されました。えきねっとに一本化するようです。モバイルSuica自体が最低限おサイフケータイ、できればビューカードも必要という入会にハードルがあったことは事実でしたから。
勿論モバイルSuicaそのものでの乗車や買い物は今後も利用できる予定で、えきねっとで購入してモバイルSuicaにインストールすることもできます。Apple PayやGoogle Payでの利用も可能になります。
7.多くの駅で在来線乗り継ぎも容易に(私鉄も含む)
東北新幹線(東京~一関)や上越新幹線(越後湯沢と浦佐以外)であれば在来線もSuicaに対応しているので乗り換えも容易にできます。勿論JRに限らず私鉄や地下鉄でもSuicaに対応していれば利用可能。
とはいえ未対応の路線や駅もあるので目的地の駅がSuica対応であると解っている場合ならスムーズな乗換えができそうです。
また東京近郊を中心にICカードのみに対応した駅ビル内改札もできており、こういった改札を利用したい場合も有利に働きそうです。
8.「乗車券」と「特急券」の境が事実上なくなる
日本の新幹線では乗車券(運賃)と特急券(料金)が必要であり、発券方法によってこれが2枚に分かれていたり1枚にまとまっていたり、特に自動改札や乗換え改札を通る上では複雑なのが難点でした。
えきねっと・e5489で予約新幹線eチケットサービスでは、スマートEXやモバイルSuica新幹線と同じく専用商品という扱いで両者が一つにまとめられます。
そもそも遠距離では普通列車のみで行くことが運行本数の少なさや乗換えなども含めて困難なことも多く、青春18きっぷの利用を除けば現代においては合理的でない選択肢となりつつあります。
近年徐々にJRがネット割引を強化しているという話を何度かしていましたが、これで対象者が一気に広まり航空便と同じく早割化、オンライン化をすすめていく確信が一気に高まったと思います。
参照:東京~甲府が¥1960~えきねっとが特急かいじ号30周年セール。JRでは珍しいセールは続くか?
参照:大宮→新函館北斗が1万以下!新幹線でも早割本格化の兆し【はやぶさ101号限定】
そもそも日本の鉄道は地域格差が大きく、長距離列車の切符はオンラインでも窓口でも場所や時間の制約が大きく、お世辞にも便利とはいえない状況ですから。比較的普及度の高いSuicaやICOCAを使うオンライン予約はある意味もっとも合理的だと思います。
参照:「きっぷ」「ICカード」「QRコード」3つ全てに対応するロンドンの改札機に見たJRの将来。
参照:サンライズ出雲の寝台券購入に30分…JRの発券システムが致命的に遅れてる
9.「東京都区内」「仙台市内」扱いも事実上なくなる
片道200kmを超える乗車券での「東京都区内」等の扱いも、エクスプレス予約やモバイルsuica特急券同様に無くなります。購入期限のない基本料金では一律200円引きですが早期購入割引も設定するようです。
はやぶさ号の事前購入割引の割引率が下がっているのは気になりますが2週間前まで(13日前の午前1時40分まで)の購入なら概ね30%割引が常設化され、さらに期間限定での割引も設定される予定です。
10.トクだ値からJRE POINT特典チケットまで新幹線eチケットに統一される
その後2020年6月、2021年夏をめどにえきねっとの大幅リニューアルが発表されました。
参照:えきねっとが2021年夏に大幅刷新でクレジットカード不要に。若年層獲得とカラ予約対策そして特典チケットへの布石。
ここでは従来窓口や一部券売機のみで対応していた
- 株主優待や大人の休日倶楽部会員価格での新幹線・在来線特急チケット
- JRE POINTから交換する「特典チケット」および「アップグレード」
がえきねっとでも予約可能になると発表されたのですが、いずれも新幹線はすべてeチケットとなり紙のきっぷでの取り扱いはしないことが明記されています。既に新幹線用回数券は縮小傾向にありJR東日本および北海道新幹線・北陸新幹線においてはこの新幹線eチケットサービス開始と同時に回数券は発売終了しています。
背景には窓口業務の簡略化と転売対策があると考えられます。株主優待券は売買譲渡可能ですが、大人の休日倶楽部もえきねっともJRE POINTも会員制であることから(中途半端にまとめたMy JR EAST IDなんてのもあるけど)利用状況のデータベース化による将来的な臨時列車や割引運賃の設定をより柔軟にすることも可能になるでしょう。
11.窓口も券売機も不要で地方インフラ維持に期待
JRは民営化以来、都心部の混雑路線で発券、改札のスピードアップと高効率化を進めてきました。Suicaは券売機でのきっぷ購入が不要、改札機での読取が正確、再利用も可能です。余剰スペースの有効化(例:きっぷ売り場を売店に転用)やイレギュラーリスク回避(例:紙切れ、釣銭切れ、可動部の詰まりや磨耗がない)にも大きく貢献しています。
参照:JRE POINTは陸のマイルになるのか?オワコン一直線か?でも今後に期待
この流れを地方にも広げていくのが新しい新幹線予約システムです。地方は経済規模が小さく鉄道への依存度の低いので、Suicaの運賃計算システム構築や改札機導入も費用対効果の面でなかなか普及せず、新幹線駅を中心としたかなり限定的なものに過ぎません。
とは言え労働人口減で旧来の窓口さえ維持するのが困難なのも事実。ただでさえ需要の少ない地方駅に、豊富な商品知識と端末操作スキルを持った駅員を何人も常駐させるのはもはや合理的でなくなっています。既にみどりの窓口を廃止し指定席券売機に置き換えた駅は東京近郊含め数多くあります。
そこで遠距離きっぷをオンライン販売化、モバイルSuicaのように専用の端末もカードも不要であれば、利用頻度の低い層にも使いやすく、駅まで買いに行く必要もなくなります。TGVやICEといった海外高速鉄道や航空便では当たり前の仕組みが、ようやく日本の新幹線にも「普及」しそうな兆しです。Suica自体は必要だけど。
またSuicaは在来線で使えないが新幹線の通る地域(盛岡市や秋田市など)でもSuicaカードの発売が始まります。現状でもNEWDAYS等の駅構内は勿論、市中のコンビニやイオン等で買い物は可能ですし、有効期間が最後の利用から10年と長いので数年に1度でも上京の機会があれば利用可能です。しかも新幹線予約なら残額ゼロでも使えます。
Suicaは「都心部でいかに多くの乗客を効率的に捌くか」を基に開発されました。それが「地方部でいかに限られた人員やインフラで捌くか」という方向にも向かい始めたとも言えそうです。
そういえば2018年4月には関東近郊で新幹線でもチャージ額引き落としによるSuica利用は始まったのですが、十分な残額が必要なことやオートチャージにも対応していないことから早くも収束しそうな予感です。
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