JRE POINTは陸のマイルになるのか?オワコン一直線か?でも今後に期待
JR東日本の共通ポイントプログラムJRE POINTが本格始動しました。2016年2月に一部駅ビルのポイントカードを統合する形で登場、この2017年5月にsuicaポイントと統合し、今後は長い期間をかけてグループ各社のポイントを統合する計画だそうです。2019年11月時点ではポイントカード提示によるサービスと事前に登録されたsuicaで払うサービスがあり、どちらか片方でも両方でも登録することができます。
- ポイントカードはもはや終末期
- 間逆の進化suicaとポイントカード
- JR東は鉄道小売唯一の勝ち組
- お店で貯めるから乗車でも貯める/使えるポイントに
- 有効期限が実質無期限に延長できるようになったのは◎
- suicaチャージが1ポイントから可能になったのも◎
- 今後の展開に期待すること
1.ポイントカードはもはや終末期
ポイントカードとはお店や施設での会計時に現金などとは別に提示してポイントを貰い、そのポイントを支払や商品の交換に利用できるものです。当初JRのいくつかの駅ビルで発行されていたポイントカードを統合したのがJRE POINTと言えます。
ところが現代では既に共通ポイントカードはTポイントに始まりそれに対抗するPonta、元々カードは発行していなかったのに実店舗でも使えるようにした楽天Rポイント、dポイントとあれこれ乱立。ローソンやマツモトキヨシのように複数のポイントに対応する店舗も出現。消費者としては一つにまとめられるのはいいのですが、さすがに4つも5つも使いこなすのは難しくなります。
使用頻度の低いものは自然と財布の裏や奥に押し込まれさらに使われなくなります。最近では手帳型スマホケースにカードを数枚入れる人も増えてきましたがアレはもっと残酷で、3つか4つしかないポケットに入れてもらえなければ引き出しの中で余生を送るしかなくなります。
一方で事業者にも負担は大きいのです。ポイントをつけるということは顧客に貸し付けているようなもので、それだけ収益は減ります。
これが10年以上前のTポイントであれば宣伝効果や顧客囲い込みのほうが大きかったのですが、似たようなサービスが乱立してはその効果も薄れていきます。
さらに最近では生産性低下、簡単に言えば1時間当たり/レジ1台あたりの売上げや客数を上げるために、ポイントカードはむしろ妨げになっていることに企業は気づき始めました。
ポイントカードの有無を聞いて、気づいた客が財布をまた捜し始め、カードが出てくればをスキャンしてそこでようやくお金を受け取ることになります。こんな面倒なことをピーク1時間に100をゆうに超える数の人にしているのが今のローソンやファミマです。
最近になってコンビニの無人化やセルフ化の実験が各地で行われていますが、支払とは別にカードの授受を行う工程が加われば技術的にもハードルは上がり時間短縮効果、投資対効果も小さくなるのは明らかです。
事実Tポイントの付与レートはレジを伴う店舗の多くが200~220円で1ポイントに改悪され、一方でYAHOO!ショッピングやLOHACOでは100円で1ポイントしかも3倍5倍セールも頻繁に行われています。追加作業が発生し時間のかかるリアル店舗では敬遠され、会員登録をしたほうが手続きが簡単なネットショップでは優遇されているのです。
2.間逆の進化suicaとポイントカード
実はこの作業の簡略化によるスピードアップ、高効率化を実現するということにJRは30年近く前から注目していました。今以上に通勤ラッシュが酷かった訳ですから必然的な流れかもしれません。
1991年に切符を買うことなく直接改札機に入場できるイオカードを導入(2006年使用停止)。2001年には繰り返し入金できて摩擦部分の無いsuicaが導入されています。
どちらも5000円購入/チャージしても1円も割引されないにもかかわらず、ユーザーは爆発的に増えていきました。微々たる安さよりも明確に簡単で便利なほうを選んだわけです。2014年以降首都圏の鉄道/バスでは10円未満ですがICカードを割引するようになっています。suicaとほぼ同じ時期に支払い手段とは別にポイントカードを用意しはじめた小売各社とは正反対の動きです。
ユーザーが買い物でポイントを得るという点でも同様です。Tポイントやpontaでは加盟店であっても顧客がレジにカードを出さなければポイントは貰えません。ところがNEWDAYSや駅の自販機であれば「支払=ポイント付与」なので簡単かつ貰い忘れが起こらない仕組みになっています。
3.JR東は鉄道小売唯一の勝ち組
一方でここ最近駅構内の売店にも動きがありました。東京メトロがローソンと、西武や近鉄、JR九州等がファミリーマートと、JR北海道、JR西日本、京浜急行がセブンイレブンと包括提携を進め駅構内店舗のブランド化を進めつつあります。
つまり小売業は市中で実績のある企業に任せたほうが効率的で、一方コンビニとしても駅構内は集客が見込める好立地だったので利害が一致したわけです。
ところがJR東日本ではNEWDYS等自社系列でほとんど固めています。それでいて1店あたりの売り上げは業界トップクラスです。勿論売場面積も営業時間も大幅に小さいにもかかわらずです。
しかもセルフレジを3割の店舗で導入するなど自動化は同業他社を大きくリードしています。電子決済は速くて確実というのを今更になって改めて実感する限りです。
皮肉にもコンビニ各社やイオングループは複数の電子決済を同時に導入したため、レジ操作で「Edy」「iD」「WAON」「Quicpay」「交通系IC」を改めて選択する必要があり、中には客が無言のまま財布やスマホをかざす素振りをするだけなので店員が電子決済の種類を改めて聞き直す、あるいはこちらから決済手段を伝えて初めて奥からカードリーダーが出てくるという、電子決済が逆に渋滞メーカーと化したチェーンもあります。
後発であり本業ではなかったJRが小売店の自動化の先頭に一気に巻き返したというのは本当に皮肉です。
4.お店で貯めるから乗車でも貯める/使えるポイントに
旧suicaポイント時代も含めJRE POINTは鉄道乗車では貯まらず、あくまで駅ナカの買い物でという位置づけでした。貯めたポイントはsuicaにチャージすることが可能です。またアトレ等カード掲示によるポイント獲得ができるお店ではポイントでの支払いもできます。
しかし2019年10月から突如方針を変更、JR東日本管内に限りsuica乗車でもJRE POINTを付与するようになりました。2021年春とまだ先ですが新幹線や特急列車の「特典乗車券」交換も予定しているそうです。
参照:JRE POINTが遂に陸のマイルに。乗車でもポイントを貯めて特典乗車券でグランクラスに?
ビューカード以外のクレジットカードでsuicaにチャージするにはモバイル端末の有無やモバイルsuica年会費など障壁が大きいので、買い物で貯めたポイントで電車に乗る陸マイラー的な使い方が想定されます。ただモバイルSuicaは2020年2月に年会費無料化が確定しており2019年9月~2020年1月分年会費徴収分も同額のJRE POINTでポイントバックしています。
また2018年春から首都圏普通列車suicaグリーン券にも交換できるようになりました。乗車区間や曜日にかかわらず1枚=600ポイントなので平日や長距離の利用ほどコスパが上がります。
参照:JREポイントはsuicaグリーン券に交換が今のところベスト!1乗車600ポイントで曜日問わずどこまでも。
ただ旧suicaポイント時代にはGポイントやネットマイル/すぐたま等のポイントサイトからsuicaポイントに交換することができたのですが、その交換ルートは提携終了で絶たれてしまいました。
5.有効期限が実質無期限に延長できるようになったのは◎
航空会社のマイルやクレジットカードのポイントは獲得から2~3年程度の有効期限があるものが多いです。したがって定期的に多数稼がないとポイント数の多い景品への交換がそもそもできないこともあります。
盆正月に国内線に乗る程度(1便200~700マイル程度)では欧米線ファーストクラス特典航空券(15万マイル以上)は貯まるはずもありません。
JRでも以前はそうでした。
- 旧suicaポイント…獲得翌年度3月末まで有効
- 旧ビューサンクスポイント・・・獲得翌年度3月末まで有効
それが幾度かの改訂を経て現在のJRE POINTは最後の獲得・利用から2年間以内に残高の上下があれば期限が延長されるようになりました。これは英米の航空会社のマイルやT-POINT、ponta等と同じく半永久的に貯め続けることも可能です。これは利用額や頻度の少ないユーザーに朗報です。
例えばsuicaで3000円分チャージという特典を受けるのに必要な支払額の例は、
- 駅ナカで買い物・・・60万円分
- VIEWカードでチャージ・・・20万円分
という果てしないもので、これを2年以内に達成するのは至難の業でしたが有効期限がなくなればそのハードルは下がります。
6.suicaチャージが1ポイントから可能になったのも◎
貯めたポイントをsuicaにチャージすることでキャッシュバックをもらうことは従来からできましたが、最低交換単位のハードルが高すぎました。
- 旧suicaポイント・・・100円以上1円単位
- 旧VIEWサンクスポイント・・・1000円単位
- 現JRE POINT・・・1円単位
旧suicaポイントにいたっては駅ナカで年間2万円以上使わないとポイントが失効する計算でしたが、少ない額からでも利用できるのは利用の少ないユーザーにもメリットがあるわけで、「どうせそんな貯まらないし」と諦めていたユーザーを取りこぼさない仕組みに仕上がっています。
例えばANAマイルも一旦SKYコインに交換することで10マイルから運賃支払に充てられるので、利用額・頻度の少ないユーザーにもそれなりにメリットはあり、交換のハードルを下げることもユーザーを取りこぼさないために重要と言えます。
参照:ANAマイルが飛行機のライトユーザーにもおすすめな7つの理由
7.今後の展開に期待すること
2018年6月、ビューカードの利用で貰えるビューサンクスポイントをJRE POINTに統合しました。予想通りビューサンクスポイントでの人気交換商品であるsuicaペンギングッズ、オリジナル鉄道グッズもJRE POINTから交換できるようになりました。自社がライセンスを持っているから強いですね。
ただ鉄道グッズやsuicaペンギングッズはビューカード会員のみ交換可能なので、結局今までと大きく変わっていないのかな?
一部の駅ビルではカード提示による利用ですがこの駅ビルは改札付近やホーム上の売店に比べ客の流れがゆっくりで、本当の意味での集客を狙ったものと思われます。
事実旧suicaポイント時代から平塚、熊谷あたりの駅ビルが頻繁にポイント5倍10倍のキャンペーンを実施していましたし、岩手県や山形県のNEWDAYS限定キャンペーンもやっていました。一方NEWDAYSやそば屋ではsuica支払割引のある商品を置く等決済迅速化を進めていました。
日頃から客数・収益が見込める店とそうでない店とを明確に分けているようにも見えますし、郊外店も結局JRに乗って乗客が集まるわけだから一石二鳥です。
えきねっとポイントとはどうなるか未だ不明瞭ではあります。ネット通販こそ顧客情報管理で有利になるのですが、suicaが十分強いせいもあって、やらないのか遠い先になるのか…
いずれにせよsuicaは導入当初から手順の簡略化、混雑緩和、余剰スペースの有効化、(磨耗、紙詰まり、釣銭切れなど)イレギュラーリスク回避を目指していて、ユーザーには簡単で高還元というメリットをもたらし、これが地価上昇、人手不足、外国人含む観光需要増大が進む現代になってさらに、というかようやく効果を発揮しだしたかなというところです。
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