新幹線や特急列車で車内販売縮小相次ぐ。敗因は「圧倒的宣伝力不足」
JR各社が2019年3月15日をもって車内販売を縮小すると発表しました。北海道新幹線や秋田新幹線のように一部区間で営業終了するものや、中央線や常磐線のように販売品目を縮小するものがあります。
参考:https://www.jreast.co.jp/press/2018/20190222.pdf
1.人件費やロス軽減の問題
新幹線では新青森~新函館北斗や盛岡~秋田で車内販売の乗務が終了します。また山形新幹線つばさ号や上越新幹線とき号では販売商品が縮小します。在来線特急では常磐線や中央線で販売商品縮小、運行本数の少ない日光・鬼怒川方面の特急では車内販売自体が終了します。
ここから推測されるのは長距離列車の販売員乗務区間を削減し販売員の配置適正化、そしてお弁当等消費期限の短い商品を廃することでのロス軽減が目的ではないか、ということです。
売り上げの少ない区間からは撤退し、限られた人員と商品を限られた区間で展開する「選択と集中」に舵を切ったと言えそうです。
2.お弁当もアイスも土産物もなくなる
販売商品の縮小はお弁当やサンドイッチ、アイスクリーム、土産物や雑貨の取扱いを終了し、飲み物やお菓子、つまみ類の取扱いは継続するとのことです。つまり多くの列車で車内での食事や土産物の購入は出来なくなることを意味します。
片道3時間前後かかる東京~新庄や新宿~松本でも、一度列車に乗ってしまえば食事や土産物の購入は出来ないことになります。

3.「どの列車で」「何を売ってる」か判らない
車内販売が不振に陥った背景は、乗客が「どの列車で」「何を売っているのか」ほとんど知る機会が無いことにあります。廃止直前の夜行列車が出発間際に「車内販売はありません」と放送を受けていたように、予約段階でもそれは全く分かりません。それならば乗車前に駅で購入しようとなるのも当然です。
かつて新幹線や寝台特急を中心に食堂車やビュッフェの営業がある列車は時刻表にマークが付けられ、駅や予約段階でもその存在を事前に知ることができました。ところが今の車内販売はあるかどうか、列車に乗るまで判りません。
かろうじてJR東日本の子会社NREのウェブサイトを見ると車内販売のメニュー表を見ることができます。しかしそこまでして探す人は少数派であり、列車を予約して駅の改札を通るまでの流れで知ることはできません。
対照的に航空会社(特にLCC)ではウェブサイトに機内販売のメニューが載っていて、予約後から搭乗までにeメールやアプリ等でも通知してくることがほとんどです。航空会社側も売上が期待できるし利用者にも親切です。

その機内販売に倣って、JR東日本の新幹線や特急では座席にメニュー表を置いてどのような商品があるか知らせていますが、以前なら巡回してきたワゴンを呼び止めないと判らない不親切な仕組みでした。
正直、無類の旅好きでも車内販売でわざわざ買おうという仕組みも魅力もないのです。これでは衰退も止む無しでしょう。
4.同じはやぶさ号なら早朝深夜も全便営業しているのか?
今回の発表でも新青森~新函館北斗や盛岡~秋田といった一部では区間を明示したものの、基本的にははやぶさ号、ひたち号といった愛称ごとの発表に過ぎません。
同じはやぶさ号でも全便で車内販売があるのか、始発や最終便では無いのかも不透明です。またひたち号の上野~品川のような区間でも営業があるかも、実際に乗ってみないと判りません。
一応、先述のNREのウェブサイトでは対象列車一覧を載せているのですがあまりに分かりにくいです。これが飲食チェーンのウェブサイトなら店舗検索や営業時間、メニューまで当たり前のように見ることができますが、JRではそうはいきません。
5. 今後車内での買い物が観光列車だけのエクスペリエンスに
新幹線や特急列車での車内販売が縮小する一方で、観光列車(JR東日本ではのってたのしい列車、JR九州ではデザイン&ストーリー列車と呼んでいる)では盛んです。

専用車両には売店が用意され、飲み物やお菓子だけでなくオリジナルグッズの販売もあります。もちろん上記ウェブサイトで事前に知ることができ、それならわざわざ乗りに行きたくなります。
今後ただの移動手段としての車内販売は衰退していき、「列車の中で買い物をする」こと自体が特別な体験になり、それを組み込んだ専用列車として商品化されていくことになりそうです。