ソラシドも導入、ANAも無料化…Wi-Fiで機内エンタメはこう変わる!
2017年夏にJALが、2018年春にANAが相次いで機内インターネット接続を無料化に踏み切っていますが、各社とも本当の狙いはその先にありました。
1.先陣を切ったJAL
国内線で一番最初に機内Wi-Fiを導入したのは2014年のJAL。当時はビデオプログラム、観光情報、JALホームページのみ無料で、外部インターネット接続は有料でした。無料で使える範囲は非常に狭かったです。当初はブラウザからログインしていましたが後にANAと同様アプリから接続するのが一般的になりました。
導入の背景は競合の少ない国内線で差別化を狙ったようです。実際JALを追うように相次いで後述のANAをはじめ高速バスや鉄道でもインターネット接続が始まりますが、それらが限定的なものであるのに対しJALは機材更新時期も相まって全便で導入(コミューター各社除く)。
30分400円、1便500円だったものが徐々に時間や路線を限定して無料化され、2017年夏に完全無料化されました。
2.ANAもWi-Fiを無料化した本当の理由
これを追うように2016年春にANAがボーイング737-800型機でWi-Fiを導入。外部インターネット接続は40分550円、1便1050円とJALより高額。しかも北海道から沖縄まで飛ぶ機材ゆえに、導入機に当たる確率が低く予約段階では対応機種か分からないというのがネックでした。
ただANAアプリをWi-Fi接続が容易なように改修し、無料コンテンツもドラマや衛星テレビ、音楽、電子書籍と幅広いのが特徴で外部接続が無くても楽しめます。国際線で見られる個人スクリーンと同じことが手持ちのデバイスでできるということです。
その個人スクリーンも2017年エアバスA321neoで導入。現在まだ運用数は少ないですが将来22機導入予定、2019年以降は既存機種にも導入するようで電子機器を持っているかにかかわらずコンテンツを利用できるようにするのが狙いのようです。あるいは将来的な電子機器の規制の強化あるいは緩和に柔軟に対応するとも考えられます。
更に2017年秋からは機内販売ANA STORE@SKYも開始。従来客室乗務員が行っていた機内販売を「通販化」しました。利用は勿論無料で、機内でメールアドレスを登録すれば降機後2日間は地上からも購入できる親切仕様です。
特に飛行時間の短い国内線で機内販売の売上機会は増えそうです。ちょうどtwitterやYoutubeが無料で利用できるように商用で収益化をはかるのかもしれません。
3.機内サービスの自動化
ほぼそれに平行して目立つのが安定飛行に入ったあとの機内サービス案内が、客室乗務員の肉声から映像と自動音声に変わりつつあることです。
最初は不思議な感じがしましたが、考えてみれば既に都心部の電車はほとんど自動放送が導入されています。しかも図や文字、英語も使われているので不慣れな人にも分かり易くなっています。今では「ツギャー、シナガー」「ダァシエリイェス!」なんて呪文のような放送はほぼ聞くことはありません。
元々飛行機の場合電車や駅ほど分かりにくい喋り方は聞きませんが、一種の省力化や標準化という意味は大きいと思います。
先ほど「通販化」と言ったように、これは機内販売で非常に効果的だと思います。欲しい人はいちいち乗務員を呼ばなくていいし、降機後もじっくり検討できるし、狭い機内に過剰在庫を抱えなくていいし、旅の往路でも荷物が増えないし。
国際線ではエティハド航空のように飲み物の注文をタッチパネル化しているところもあるようで、必要であればいつでも気軽に注文できるし機械なら言葉の問題も解決しやすいです。
一方で通販サイトのように周囲の行動パターンから購入を薦めやすくなるのかなと想像してみたり。
4.ソラシドエアも導入
あまり目立たないのですが国内大手2社に続き、ソラシドエアもWi-Fiを活用した独自の機内エンターテイメント「ソラタイム」を2017年12月に導入。
但し外部インターネット接続はできず、九州地方のローカル情報をオリジナル動画もしくは電子書籍で配信するものです。
ソラシドエアの機材はオーディオやビデオスクリーンは装備していないので結構意外です。スマホやイヤホンを持参する必要がありますが、インターネット接続をしないことでコストダウンを図りつつも、地域独自の情報を発信していくことでブランド化を図る狙いでしょうか。
5.差別化、通販化、ブランド化
このように見ていくと国内エアラインのWi-Fi事情は、JALは航空他社やJRとの差別化、ANAはJALに追随しつつも機内販売を通販化/収益化、ソラシドエアはローカル回線で地域情報を発信するブランド化とそれぞれ異なったアプローチをしていることが分かります。
またスターフライヤーのようにWi-Fiでの外部機器接続はしないものの個人スクリーンで動画や音楽、電子書籍(一部機材のみ)を配信する所もあります。これも将来どう変わるのか注目されます。