えきねっとが2021年夏に大幅刷新でクレジットカード不要に。若年層獲得とカラ予約対策そして特典チケットへの布石。
JR東日本の予約サイト「えきねっと」の大幅リニューアルが発表されました。現在必須とされているクレジットカード登録が不要になり、またJRE POINTでの「特典チケット」交換の大まかな流れもわかってきました。
- 現行では支払いと受け取りの為にクレジットカードが必須
- クレジットカードのほかにコンビニ払いや銀行振り込みも可能に
- きっぷ受け取りは券売機でQRコード読み取りに
- 支払い発生はきっぷ受け取り時→予約時に
- 安すぎる変更払戻し手数料にメスが入る?
- 株主優待券割引がえきねっとでも利用可能に
- えきねっとでJRE POINTが貯まる!単純な利用額方式に
- JRE POINTで新幹線や特急の「特典チケット」「アップグレード」に交換
1.現行では支払いと受け取りの為にクレジットカードが必須
現行制度ではえきねっと会員登録にクレジットカードが必要です。また券売機等できっぷを受け取る時にそのクレジットカードが必要です。但しこれにはデメリットが多かったのも事実です。
- クレジットカードを持っていないと予約できない
- 乗車前にクレジットカードが無いときっぷを受け取れない
- ネット通販でしか使わないカードを持ち歩くリスク
- 暗証番号不一致や限度額越えなどで発券できないリスク
- ネット通販専用カード(バーチャルカード)では予約できない
例えばクレジットカードを持たない若年層では利用できないことになりますし、一方クレジットカード情報をあらかじめ会員情報として登録するため、銀行口座に紐づいたデビットカードも登録できないのが現状です。指定席券売機ではデビットカードでも購入できます。
また三井住友カードや
エポスカード等が発行しているバーチャルカード(番号とパスワードのみ発行されるオンライン決済専用サービス。プラスチック製のカードは発行されない)も利用できません。
2.クレジットカードのほかにコンビニ払いや銀行振り込みも可能に
さすがにこれでは対象者が限られセキュリティ面でもふさわしくないと判断したのか、2021年夏から新たにコンビニエンスストア端末や銀行ATMやネットバンキングでの支払いも追加されるようです。
これは既に航空会社や高速バス予約サイト、鉄道でもJR西日本のe5489など対応しているサイトは数多くあり、えきねっとは規模を考えるとむしろ遅きに失したか感じすらあります。
但し即時決済でないためクレジットカードに比べて支払期限が早かったり手数料がかかるなどのデメリットは想定されます。
また公式プレス中では触れられていませんがクレジットカード情報の登録が必須でなくなることや、後述のきっぷ受取時決済から予約時決済に変わることを考えるとデビットカードの利用も可能になると推測されます。
3.きっぷ受け取りは券売機でQRコード読み取りに
また現行システムでは登録したクレジットカードを挿入し暗証番号による認証が無いときっぷの受け取りができないのですが、予約データに基づくQRコードを指定席券売機にかざす方式に変更するようです。
これで出発当日にクレジットカードを忘れたり、暗証番号がわからない等の理由で発券できないトラブルは防げそうです。また券売機自体の操作簡略化もされるでしょう。
4.支払い発生はきっぷ受け取り時→予約時に
現行システムでは決済はきっぷ受取時に行われますが、これを一般的な予約サイトや通信販売同様に予約と同時にタイミングを変更するそうです。このメリットは大きく繰り返しになるものもふくめ
- 支払い情報(カード番号や暗証番号含む)をえきねっとで一括管理できる
- 当日カード忘れのリスクが無い(指定席の場合それでも代金は請求される)
- きっぷの受け取り作業が簡略化され時間短縮が期待される
等が挙げられます。
5.安すぎる変更払戻し手数料にメスが入る?
この決済タイミングの変化の背景にあるのはJR乗車券類が航空券などに比べて甘すぎるキャンセルポリシーがあります。
例えば普通乗車券や特急券には1回に限り無手数料で変更可能というルールがあります。この変更の範囲が広すぎて、例えば「新横浜→静岡」から「大宮→新青森」という全く異なる出発地・目的地への変更も可能です。また払戻し手数料は乗車券・特急券などでそれぞれわずか数百円で済みます。
安易な乗車変更は窓口負担の増加や需要予測精度の低下など円滑な輸送サービスを間接的に阻害する一因にもなるでしょう。
例えばムーンライトながら等の需要の高い指定席券でのより需要の多い日へ変更してネットオークションで転売する等公平性を欠く手法に使われることもあります。
但しえきねっとトクだ値は割引率がそのまま手数料となっており割引率30%のトクだ値30の場合、無割引価格が10000円の場合払戻し手数料3000円とそこそこ高額です。これは航空券の早期購入割引に近い仕組みです。
6.株主優待券割引がえきねっとでも利用可能に
JR東日本の株主優待券は運賃や特急料金、グリーン料金が1列車4割引になるすぐれもの。従来は窓口でのみの取り扱いでしたが2020年度からID番号を削り出すスクラッチカード型(JALやANAの株主優待に似ています)となり指定席券売機での発券も可能になりました。
また50歳以上の利用者を対象に5~30%割引が受けられる会員制度「大人の休日倶楽部」でも現状はみどりの窓口もしくは指定席券売機(JR東日本の一部駅のみ・JR北海道は対象外)での発券になります。
2021年にはこの株主優待や大人の休日倶楽部割引がえきねっとでも利用可能になります。既に航空大手2社はウェブサイトでの購入にも対応しているので、それに追従する形です。短距離の鉄道利用がSuica等のICカードが当たり前になったように、長距離の鉄道利用もウェブサイトを活用していく方針が強まったと言えます。
7.えきねっとでJRE POINTが貯まる!単純な利用額方式に
えきねっとでは従来利用に応じてえきねっとポイントが貯まる仕組みですが、指定席の利用1回に付与されるもので、自由席は対象外だったりJR他社線ではポイント付与率が低いなどデメリットもありました。
これを純粋にえきねっとでの購入額に応じたJRE POINT付与に改めるようです。既に2019年秋からSuica乗車でのJRE POINT付与は行われており、長距離でも郊外でも乗車でJRE POINTを稼げるようになるようです。
ただ既にビューカードではえきねっと含むJR東日本支払い分は1.5%JRE POINTが付与されているのでクレジットカードやモバイルSuicaで付与率に違いが出てくるようになるのか、差別化してきそうな点も見られます。
なおえきねっとポイントは既にJRE POINTへの交換が可能で、2021年8月限りでのサービス終了が発表されています。
8.JRE POINTで新幹線や特急の「特典チケット」「アップグレード」に交換
以前より注目されていた陸のマイレージともいうべき「特典チケット」「グリーン車・グランクラスへのアップグレード」の申し込みもえきねっとで行われるようです。
参照:JRE POINTが遂に陸のマイルに。乗車でもポイントを貯めて特典乗車券でグランクラスに?
今回発表された資料によれば
- えきねっとでのJRE POINT利用は「特典チケット」と「アップグレード」
- えきねっと以外の窓口等では申し込めなさそう
- 新幹線特典チケットは新幹線eチケットが前提
- アップグレード前の予約もえきねっとが前提
- えきねっとが会員制である以上転売対策もされている?
というのは確実性が高いでしょう。列車の予約を賢くオトクに仕上げるツールとしてえきねっとを育てていくのではないかと推測されます。
また図から察するに特急列車。宣伝効果のありそうな最新のE261系サフィール踊り子号ではなく常磐線の特急E657系が挙げられており、需要が疑問視されていた首都圏~仙台直通列車の需要喚起策として特典チケット制度が活用されるのではないかとも注目しています。
一方アップグレードでは普通席からグランクラスへの二階級特進もあるようです。航空会社の場合エコノミークラスからファーストクラスへのアップグレードはしないケースが多く、これにも期待大です。
ただ実際には特典チケットもアップグレードも必要ポイント数など具体的な数値は公表されておらず、航空会社の特典航空券のように人気路線不人気路線で特典席数が不透明だったり交換レートが悪かったりするのかどうなるかという懸念もあります。
より具体的な内容は後日の詳細発表を待たねばなりませんが、JALマイルやANAマイルの特典航空券をウェブサイトで探すのが当たり前なようにえきねっとも進化を迫られていると考えてよいでしょう。