”新幹線半額”に踊らされないために。えきねっとお先にトクだ値で注意したい点まとめ。
2020年7月7日に発表されたJR東日本の”新幹線半額”セール。えきねっとの事前予約発売商品「えきねっとお先にトクだ値スペシャル」はこれまで何度か一部路線で発売されてきましたが、一路線限定1か月限定というものが多く、新幹線全路線が2021年3月までというのは異例です。
電車も混み具合に応じて運賃変動制になるかも、と言ったら早速出してくれたようです。#ダイナミックプライシング
JR東日本、全方面の新幹線が半額になる「お先にトクだ値スペシャル」 利用期間は8月20日~2021年3月31日 – トラベル Watch https://t.co/LFXbBmtwK8 @travelwatch_jpより
— kenzy@JRE POINTマイラー (@kenzy201) July 7, 2020
しかし半額で買うにはいくつも条件があり、むしろ根気よく探さないと出ないといった方がいいでしょう。ここでは初心者がうっかり勘違いしがちなポイントをまとめてみました。
- 空席すべてが半額ではない
- 購入はえきねっとのみ。今のところクレジットカード登録必須。
- 発売期間は僅か10日ほど。1か月前~20日前の午前1時40分まで。
- 但し諦めるのは早い。13日前まで最大35%割引や前日割引も。
- 新幹線はeチケットのみ。全員のSuicaやPASMO等登録必須。
- 東京都区内など在来線区間運賃は含まない。別途購入またはSuica支払いに。
- 東京~仙台は仙台行き/始発やまびこ号のみ。はやぶさ号は古川で申し込め。
- 東京~長野は長野行き/始発あさま号のみ。かがやき・はくたか号では割引ゼロ。
- 指定列車のみ有効。乗り遅れると後続便自由席も乗れない。
- 同じ割引率のトクだ値同士なら変更可能。見つかるかな?
- 払戻し手数料が割引率と同額。30%割引なら30%も引かれる。50%は返金ゼロ。
1.空席すべてが半額ではない
航空券や高速バスではおなじみですが35%や50%の割引率で発売される座席数は制限されています。
JR東日本公式では「終日の〇〇号※但し一部の列車に着いては対象外となることがございます」としていますが1列車あたりで見ると非常に少なく、特に午前中の下り列車と夕方の上り列車は少ないです。
下は50%割引発表前のものですが、東京→仙台のとある検索結果からわかることがいくつもあります。順次追って解説します。
これを見ると対象列車も割引の座席も実は非常に限られているのがわかります。
2.購入はえきねっとのみ。今のところクレジットカード登録必須。
購入はJR東日本/北海道の列車予約サイトえきねっとのみです。但し北陸新幹線に限りJR西日本のe5489でも同様の商品を扱っています。
一方駅の窓口や券売機、旅行代理店等での発売はありません。これは項目5.でも説明するある理由によって受け取れないのです。
支払いはクレジットカードの登録を含めた会員登録が必要ですが、2021年夏をめどに銀行やコンビニ払いにも対応するようです。VISAやJCB、マスターカード、アメリカンエキスプレス、ダイナースクラブなど。勿論ビューカードである必要はありません。
3.発売期間は僅か10日ほど。1か月前~20日前の午前1時40分まで。
えきねっとは2020年7月現在営業時間が
- 5時30分~23時40分
- 0時20分~1時40分(臨時メンテナンスで利用できない日あり)
となっており深夜に予約や空席照会を休止する時間があります。特に日付をまたぐ23時40分~0時20分の40分間は要注意です。また毎月複数回ある臨時メンテナンスでは0時20分~1時40分も申し込みができなくなります。これ週に2回ある場合もあるので本気でお先にトクだ値スペシャルを狙うならメンテナンス日も要チェックです。
発売開始は乗車日の1か月前の同日(例:2月28日乗車分は1月28日、3月31日乗車分は3月1日)の午前10時からです。
購入期限はと言うと50%割引となるお先にトクだ値スペシャルは20日前の午前1時40分まで、航空券っぽく言えば21日前割引と考えてよいでしょう。つまり実質10日強しかありません。
4.但し諦めるのは早い。13日前まで最大35%割引や前日割引も。
お先にトクだ値スペシャルは半額というインパクト、限られた購入期間ではありますが、特に期間を定めていないが対象列車がある程度決まっているお先にトクだ値というのもあります。
購入期限は13日前の午前1時40分まで、実質14日前割引です。割引率は列車により30%だったり35%だったりします。さらに普通席だけでなくグリーン車も対象になる列車も目立ちます。グリーン車30%割引でも全く割引のない普通席と大差ないのでコストパフォーマンスは良いと思います。
先ほどの検索結果をもう一度引用しますがこの対象列車にはある程度法則性があります。
東北新幹線の場合、仙台発着のやまびこ100~号が目立ちます。福島駅まで山形新幹線つばさ号を連結するものが多く、所要時間は2時間ほど。後続のはやぶさ号に抜かれるケースが目立ちます。
さらに朝晩に運転される各駅停車もしくは白石蔵王のみ通過となるやまびこ200~号も対象です。こちらは所要時間が2時間半前後、何本もの後続車に抜かれることから不人気列車であり お先にトクだ値でも狙い目です。
上越新幹線の場合高崎以北での追い越しは少なくなりましたが対象列車は比較的多めで特にMaxとき号の1階席がよくヒットします。予約システムの関係でMaxは2階席(一部は平屋)と1階席に分かれますがトクだ値の対象は1階席に限られるようです。
同時にトクだ値10%や15%というのも用意されておりこれはえきねっと限定の当日午前1時40分まで購入可能なチケットです。航空券で言うなら実質前日割引のようなものです。それすら対象列車が限られているのがわかります。
同じ値段なら途中で追い越されない速達型や特急と乗り換えの良い列車(新潟から酒田方面、金沢から福井・七尾方面)が人気の半面、停車駅の多い長距離列車や天井が低く景色の悪い1階席は避ける傾向からそういった条件で対象列車や区間が選ばれるようです。
5.新幹線はeチケットのみ。全員のSuicaやPASMO等登録必須。
くどいようですが検索結果をもう一度見てみましょう。青色と緑色の部分です。
割引率に関係なく新幹線の割引チケットはSuicaやPASMO等の交通系ICカードを登録する新幹線eチケットのみであり紙のきっぷでは受け取れないのに注目です。1回の予約で大人こども含め6名まで予約可能ですが全員分のICカード番号登録が必要になります。
参照:新幹線eチケットはネット予約→Suicaインストールで2020年代のスタンダードに。やっと新幹線が時代に追いつく!
このトクだ値シリーズがえきねっと限定である理由の1つがペーパーレス発券で改札へ直行できるという点です。ちなみに在来線特急でもトクだ値シリーズは用意されていますがこちらは紙のきっぷを発行する発券方式のみです。
このICカード情報は会員登録情報としてあらかじめ登録することもできますし、予約時の入力も予約後の入力も可能です。逆に窓口や券売機での受け取り作業が無いので関西や九州から東京経由での旅行にも利用できます。
6.東京都区内など在来線区間運賃は含まない。別途購入またはSuica支払いに。
片道200㎞を超える長距離乗車券にある東京都区内、仙台市内といった特定区市内制度が新幹線eチケットにはありません。山手線など在来線利用はSuica等残高から差し引くか、別途きっぷを購入することになります。
新幹線eチケット自体が割引のないフルフレックス型でも紙のきっぷより200円安い(自由席は同額)というのはありますが特定区市内区間が長い場合(例:西荻窪~作並)であれば10%程度の割引は捨てて紙のきっぷで購入した方が安上がりなケースも、かなり稀ではありますがあり得ます。
7.東京~仙台は仙台行き/始発やまびこ号のみ。はやぶさ号は古川で申し込め。
このえきねっとお先にトクだ値は列車ごとそして発着駅ごとに定められているので、探し方によっては見つかりにくいのが難点です。航空会社のように早い順や安い順に並べ替えができると便利なのですが。

やまびこ号のトクだ値/お先にトクだ値の設定区間。仙台発着の便のみ設定。
このように見ると東京~仙台はすべての便が割引対象なわけではなく最速のはやぶさ号/こまち号は対象外です。また主に東京を午前中に出発する盛岡発着のやまびこ50~号も対象外です。

盛岡発着のやまびこ号にも古川以北発着なら割引がある。
ですが盛岡発着のやまびこ号も古川以北であれば対象になります。東京から仙台と古川では通常の運賃+特急料金は600円程度しか差がないので10%でも出れば古川までで発券する価値はありそうです。
一方で大宮~仙台ノンストップのはやぶさ号にもトクだ値/お先にトクだ値は設定されているものの割引率は下がり、何より区間が古川以北に限られます。通常はやぶさ号は毎時1本か2本設定され仙台~盛岡ノンストップで新函館北斗か新青森まで向かう(はやぶさ1~号)ものに加え、一部時間帯にもう1本仙台~盛岡各駅停車というパターンのはやぶさ100~号が加えられ、これが狙い目です。
要は東京~仙台のやまびこ号でお先にトクだ値はが狙えなかったら東京~古川のはやぶさ号・やまびこ号で狙い、そして仙台で降りて以降を放棄してしまえばよいのです。

途中下車はその時点で無効となるが公式に認められている。仙台のように1駅先の古川のほうが安い、越後湯沢のように1駅先の浦佐でないと割引対象にならないケースには有効。
そんなことできるのかとも思えますが新幹線eチケットは途中下車前途無効(旅程途中で乗る/降りるはできるが乗る以前/降りた以降は無効となり再入場で乗車継続も返金もできない)というルールがあります。
8.東京~長野は長野行き/始発あさま号のみ。かがやき・はくたか号では割引ゼロ。

かがやき/はくたか号は飯山以北でトクだ値のみ扱いお先にトクだ値は設定されていない。半面長野発着のあさま号の割引率は高い。
北陸新幹線も同様に最速型かがやき号、準速達型はくたか号、ほぼ各駅停車で長野発着のあさま号に分かれますが、東京~長野ではあさま号のみが割引対象になっています。安中榛名を除けばどの駅も高速バスが並行して走っており特に閑散期はかなりの安値で出ているので新幹線の価格的劣勢を立て直したい思惑もあるでしょう。
参照:【信州紀行’18①】アルピコ交通バスタ新宿→長野駅乗車レポ。本当に1500円でWi-Fi完備とか間違いなく新幹線以上。
9.指定列車のみ有効。乗り遅れると後続便自由席も乗れない。
えきねっとトクだ値シリーズで注意すべきは航空券や高速バスの早割同様に指定列車のみ有効ということです。通常指定席特急券では乗り遅れた場合当日の後続列車の自由席を利用することができますが、トクだ値では当日乗車券相当分のみ有効で別途特急券の購入が必要になるということです。
しかも改札にタッチするだけの新幹線eチケットなので指定列車出発後に改札を通過できるのか、特急券を購入したうえで有人改札処理になるのか、いずれにせよ面倒なことになります。
ちなみに現在JR東日本の新幹線では指定席販売&改札通過状況が車掌端末に転送されるので、指定席の空席に座っていたり自由席の場合は車内改札がやってくるようになっています。
10.同じ割引率のトクだ値同士なら変更可能。見つかるかな?
一方で航空券や高速バスの早割が変更不可なのに対して、トクだ値は同じ割引率の空席があれば変更可能というルールがあります。
発売期間も席数も限られる実質21日前購入のお先にトクだ値スペシャルでは期待できませんが、前日まで購入可能なトクだ値であれば期待も持てます。JALの特便割引1やANAのバリュー1が変更不可なのを考えると良心的な仕組みかもしれません。
11.払戻し手数料が割引率と同額。30%割引なら30%も引かれる。50%は返金ゼロ。
航空券では当たり前でも鉄道乗車券ではなじみのないルールですが払戻し時の手数料が非常に高いことです。
普通乗車券や自由席特急券で220円、販売数の限られる指定席でも340円(乗車2日以内だと30%)、週末パスなどの企画乗車券でも840円とだいたい1000円以下に収まるケースが多いのですが、トクだ値シリーズは割引率の分がそのまま払戻し手数料に跳ね返る形です。
例えば運賃+指定席特急券10000円の区間の場合、
- トクだ値10なら発売額9000円→手数料1000円で8000円返金
- お先にトクだ値30なら発売額7000円→手数料3000円で4000円返金
- お先にトクだ値スペシャル50なら発売額5000円→手数料5000円で返金なし
払戻しを申請しても購入金額の半額以下しか返金されないというのは航空会社では目立ちます。日本国内線でもJAL先得やANAスーパーバリューの出発直前での払戻しで見られます。しかし鉄道業界でこのルールが浸透するかは不透明です。
2020年春以降の新型コロナウイルス問題で航空各社はこのような変更・払戻しに制限のある運賃でも例外的に変更や払戻しを受け付ける対応をしており、これは2020年7月現在新規発売中の運賃でも適用するとしている航空会社が目立ちます。
一方JR東日本では4月下旬に新規(5月下旬)指定席の予約受付を見合わせ、既に発券された乗車券類は無手数料での払戻しに応じていましたが、2020年6月で無手数料払戻し扱いを終了しています。発売開始が1か月前と短いことや現状えきねっとの運用時間の問題からしても今後このような特別対応が取られるかも不透明です。
しかし割引率が高く乗車列車が固定されたチケットを選ぶか、割引は無くても変更の自由度が大きいチケットを選ぶかは自由です。ジェットスターやPeach等のLCCでは新幹線が霞むほど安いものの購入後の返金を受け付けない運賃もありますし、そうやって成長してきたビジネスモデルもあります。
一方新幹線は通勤電車の延長線上で「来たものに乗る」感覚が飛行機より強いのも事実。また航空券は勿論高速バスすらも閑散期割引を始めており価格的優位も必要とされてるのも事実。この辺がオンライン予約でどう変わるのか興味深いところでもあります。