カーシェアリングは結局どこがいい?大手3社の方向性から分析してみる。
日本でカーシェアリングを展開する大手3社がタイムズカーシェア、careco、オリックスカーシェアと言えそうです。カーシェアリング調査会社ジェイティップスの2020年の調査によると
- タイムズカーシェア(47都道府県/13200台/27800ステーション)
- オリックスカーシェア(37都道府県/3400台/2100ステーション)
- careco(12都府県/4100台/2800ステーション)
という規模。東海地区メインの名鉄協商のカリテコで350台、メーカー系のホンダEveryGoや日産e-シェアモビが100台そこそこなのに比べると圧倒的ビッグ3と言えます。このビッグ3の特徴を分析しユーザー目線でどれが自分に合ったサービスなのか考察していきます。
- 毎月使うなら月会費必須のタイムズカーシェア。地方でも活躍
- 周遊利用で結局ローコストで済むオリックスカーシェア
- プランと車種で「足グルマ」と「高級車」が棲み分けられるcareco
- EveryGoとe-シェアモビは月会費無料のデメリットなし。まず入って損なし。
1.毎月使うなら月会費必須のタイムズカーシェア。地方でも活躍
- 台数も設置場所も圧倒的。
- 都心部から住宅街、地方も県庁所在地や新幹線駅中心に網羅
- 6時間以下なら距離料金無し
- 利用実績によるステージ制度あり→早期予約や大型車に有利
- 月会費無料プランなし。利用が少なくても最低880円かかる
- ビルの上層階や激狭物件など入庫が難しいステーションあり
- 1台しかないステーションあり。ミドルクラスの場合も
- 輸入車の減少傾向とミドルクラス新設で実質値上げも
日本のカーシェアリングの最大手ゆえ台数も多く、都心部に限らず地方都市でもステーションが拡大しているのが特徴です。クルマ社会と言われる水戸市、福井市などにも複数個所展開しており、特に新幹線の駅は東北・東海道・山陽・九州新幹線全駅を網羅するなど遠方からの二次交通にも力を入れています。
ただパーキング事業出身ということもあり、その圧倒的なステーション数の中には狭い住宅街、入り口に段差、切り返しが必要といった出入りの難しいステーションがそこそこあるのも事実です。ただほとんどの車両にバックモニターや後方センサーが設置されています。また後述のcarecoとは違いステーションに駐輪場は無く、自転車でアクセスすることは公式に認めていません。
これはメリットでもデメリットでもあるのですがタイムズカーシェアでは月会費無料プランが無く月額基本料金880円が原則必要で、利用料金に充当可能です。したがってアクティブユーザーが多く台数やステーションの拡大の原資になっていると推測できます。

タイムズカーシェアの会員ステージのベネフィット。達成条件はタイムズカーシェア公式を参照。
また利用実績(走行距離や給油回数、前利用者からの評価、事故や規約違反の有無)に応じてステージ1~4のランク制度があります。
ステージが上がると予約開始が2週間前→3週間前に伸びたり、上級クラスの車両の利用額値下げや月額基本料金無料などの優遇措置があります。ただ月間利用が無いとステージダウンしてしまうのでヘビーユーザーは貯まったタイムズポイントをカーシェアeチケットに交換して実質無料で使うケースが多いと考えられます。
また近年ミドルクラスが新設されトヨタシエンタやホンダフリード等無理矢理7人乗りにした車を実質値上げしています。大きな買い物や子連れでの利用では便利ですが基本料金が1.5倍も変わるとステーション次第では改悪になってしまいます。勿論大小2台揃えているステーションもあります。
またプレミアムクラスはワンボックスばかりになり趣味性の高いアウディA1は全車退役、MINIクロスオーバーも絶滅危惧種に。どちらも既に日本でも次期モデルが発売されており輸入車を気軽に、という意味ではラインナップのテコ入れを希望したいです。
月額基本料金が必要なことを考えると毎月1時間は使うユーザー向けです。
2.周遊利用で結局ローコストで済むオリックスカーシェア
- 月額基本料金840円のAプランと月額無料Bプランあり
- 月額無料Bプランは時間料金が高いだけ
- 毎回時間料金と距離料金両方が掛かる
- 但しどちらも安いので長時間では安い
- 都心部ではタイムズやcarecoほど目立たないが多い
- 2台以上用意や出入りの比較的容易なステーションが多い
- 地方にも進出中だがほぼ主要駅前のみ
- ハイブリッド車に積極的だが距離料金は一律16円/km
- Aプランには利用金額に応じたステージ制で距離料金一部免除も
オリックスカーシェアはレンタカーやカーリース事業で実績のあるオリックス系列が提供するサービスです。
月額基本料金840円と大手3社の中で最も割安、勿論利用料金に充当できるので最低支払月額という扱いです。利用料金も安めですが、一方で15分単位の利用でも別途距離料金が必要になってきます。一方6時間以上のパック料金は安い一見変わった料金体系です。
しかしこれが見事に利用実態にマッチしている料金体系と言えます。大型商業施設での買い物めぐりや知人宅を訪問して食事→送迎といった距離は走らないが時間がかかる利用には最適なのです。
37都道府県に展開しそこそこの規模があるにもかかわらずタイムズやcarecoに比べて目立たないのはデメリットと言えばデメリットです。タイムズもcareco(三井のリパーク)も自社コインパーキング併設型が多いのに対し、月極駐車場に併設されるケースが多いためです。ただ街中で目立たなくてもウェブサイトやアプリで検索するから問題ないとも言えます。
そこそこコンパクトで一応3列シートの大きな買い物や送迎に便利なホンダフリードもミドルクラスですが、スタンダードクラスと価格差が小さくタイムズよりはるかに割安なのも特徴です。ハイブリッドモデル投入も積極的ですが距離料金はガソリンモデルでも同じです。

オリックスカーシェアのステージ制度。月額基本料金のかからない個人Bプランと学生プランは対象外。詳細は公式ページを参照。
オリックスにもタイムズ同様のステージ制度がありますが、タイムズが給油や後の利用者からの評価、安全走行の継続など健全な運営でステージアップするのに対して、オリックスは純粋に利用金額でステージアップする仕組みです。ステージアップで距離料金が一部免除されるのが特徴的です。
3.プランと車種で「足グルマ」と「高級車」が棲み分けられるcareco
- 月額基本料金980円のベーシックプランと月会費無料プランあり
- 利用時間は10分単位で6時間以上のパック料金もあり
- シエンタ、フリード含めベーシッククラスが最安
- 東京23区なら場所も車種も豊富だが地方は弱い
- 自転車でアクセスできる駐輪場付き物件あり
- 輸入車中心に話題の高級車や新型モデルも多数(但しステーションが決まってる&高額)
- ベーシックプランなら2か月前から予約可能
- 月会費無料プランは利用料金も距離料金も割増
- アプリの頻繁なアップデート等予約システムが脆弱
三井のリパークでおなじみ三井不動産リアルティが運営するカーシェアリング。これに関しては別記事にしています。
参照:carecoをどう使うか?「ミニバン含めて割安で日常使い」か「試乗感覚で最新高級輸入車」か
また一番下のベーシッククラスでもホンダフリードやトヨタシエンタ等の3列シート車、トヨタCH-R等の比較的大きめなSUVも選べます。ワンボックス車中心のミドルクラスもベーシッククラスの約1割増と実用的な車は安値傾向です。一方で輸入車やスポーツカーなど希少性の高いモデルはプレミアムクラス、プレミアムプラスクラスとしてベーシッククラスの約2倍以上の割高設定です。
ステーションも都心部とりわけ東京23区、川崎市、横浜市ならタイムズと同等かそれ以上に分布しており、車を持たない人のマイカー代わりとして重宝されているようです。
デメリットは2つあって6時間以上等の距離料金が16~22円/kmと車両クラスや利用プランによって変わりどれも高額ということと、連休などのアクセス集中でサーバーダウンやアプリの移行(アップデートではなく新アプリをダウンロード)が毎年のように起こっており、通信が脆弱というのもあります。
ただ、だからこそ他地域への拡大よりはステーションの台数増加や新モデルの導入で価値提供しており、実際24時間で2人以上の予約も目立つなど回転率も良いようです。
4.EveryGoとe-シェアモビは月会費無料のデメリットなし。まず入って損なし。

月極駐車場のほか自社ディーラーにも立地し、このように並ぶことも。
大手3社に比べると設置台数は桁違いに少ないものの、月額1000円のベーシックプランと長時間パック料金が600円前後高くなるだけの月額無料プラン日産e-シェアモビと、そもそも月会費が掛からないホンダEveryGoは会員登録をしておくだけの価値はあるかもしれません。
日産e-シェアモビは以下別記事にもしていますが長時間でも距離料金が掛からないのと、ベーシックプランの月額1000円は大手3社とは異なり利用料金に充当できないので、6時間以上のパック料金を毎月2回以上使わない限り月額無料プランで十分でしょう。
参照:日産の「e-シェアモビ」は日帰り旅行に最適なカーシェア。増税後も据え置き距離料金不要。
ホンダのEveryGoはN-Boxからステップワゴンまで最新モデルが幅広くある反面、台数は少ないので具体的車種の選択肢は現実には少ないです。一方日産e-シェアモビは電気自動車専門と割り切っており2020年に発表されたニューモデルのキックスe-POWERやアリアもやがては導入される可能性が高く期待がかかります。