統合が決まったPeachとバニラエア。何よりも気になる「関西色」は薄れてしまうのか?
国内LCC2番手と3番手に当たるPeachとバニラエアが統合する見通しと公式に発表されました。PeachはANAホールディングスと香港の投資会社FEIG、産業革新機構の共同出資、バニラエアはANAHDの100%子会社です。このような経緯から将来的に統合されるのではと噂はされていました。
1.予兆は2017年。Peach連結子会社化と運賃変更
共にANAHD傘下にある2社の統合の噂は以前よりありましたが、一方で双方共に独自のブランド力を確立しつつあるので並存するのではという見方もされていました。
ただ2017年にANAHDはPeachの出資比率を50%から67%に高めて連結子会社化、同時期に運賃を「ハッピーピーチ」「ハッピーピーチプラス」の2種から「シンプルピーチ」「バリューピーチ」「プライムピーチ」の3種に、名称がバニラっぽいものに変更されています。ただ運賃規則に共通性はありません。
2.「関西発」のPeachと成田拠点のバニラエアはこれだけ違う
路線設定に関しても明確な違いがあります。
①関空発着以外の路線も開拓
Peachは関西空港拠点で2012年に就航し、翌2013年以降早くも那覇拠点で台北・石垣(後に休止)・福岡線に就航、成田発着にも手を出すも現在は成田~関西線のみに落ち着き、千歳や仙台からも国内線/国際線を飛ばしています。羽田深夜便の国際線も台北・仁川・上海の3路線があります。
一方バニラエアは専ら成田発着線で、成田~千歳線は1日5~9便、成田~台北が1日4便とかなり便利な本数があります。一方で台北~ホーチミンは2018年3月に撤退、機材繰りの関係で関西~奄美線や那覇~石垣線(予定)、深夜の関西~台北線を飛ばすに留まっています。
②日本発需要が低迷する韓国線の扱い
日本から韓国への渡航者は年々減少傾向の一方で、韓国から日本への渡航者は増加傾向にあります。バニラエアは初期に成田~仁川線を運航するも2015年3月で休止しています。
対照的にPeachは初の国際線として関西~仁川線を運航し、その後那覇~仁川、羽田~仁川、関西~釜山と拡大しており、日本の航空会社による日韓路線では今やJALやANAを凌いで最大勢力を誇ります。また韓国もLCCの躍進が目立ち上記4路線は全て競合します。
③陸上交通もライバルの短距離線進出
バニラエアは国内線でも全路線が海を渡るのに対し、ピーチでは比較的短距離の松山や新潟、少し遠い宮崎や仙台にも就航しています。いずれも1回乗換えがあれば新幹線&特急でも行くことができるルートで、料金的にはそのほうが大手航空会社より有利なケースは多々ありました。
大阪~新潟は2001年に直通特急が消滅し高速バスも現在は夜行便のみ、大阪~松山は現在も高速バスが運行していますが6時間の長旅。航空便は伊丹発着でJALとANAが似たような時間帯に運航していることからプロペラ機主体であり、持ち込み手荷物や機内サービスに制限があります。Peachは日中1往復の運航で両方向とも利用しやすい時間帯、LCCのニーズは十分です。
このようにバニラエアが多くが東京発あるいは東京行きをメインターゲットにしていて、Peachは関西をホームグランドとしつつも決して「関西人のための航空会社」になっていないところが対照的と言えそうです。その意味でPeachはインバウンド(国内外問わず)の求心力の大きさは今後も期待できるでしょう。
3.ズバリPeachの「関西色」は薄れるのか?
2012年の創業以来搭乗券の挨拶文「OOKINI!!」から機内放送、機内食のたこ焼きや河内ワインに至るまでPeachのサービスには随所に関西色を感じることができます。
東京と接しない地方路線や国際線がほとんどであり、特に国際線では現地LCCとの競合も激しいのに高い収益を上げている背景には、他社にはない「らしさ」が少なからず影響しているはずです。
ただ安いだけが取り柄なら最安値を検索されて競合LCCに流れるし収益が出ない訳だし、安かろう悪かろうでもリピーターは育たないでしょう。
良く言われる話ですが地方でブランドを浸透させるのに「東京で流行ってます」では押し付けがましいけれど、「関西発」なら比較的ソフトに受け入れられる、というやつです。
実際Peachは関西ブランドが結構かつ継続的に強く、バニラエアも就航都市をテーマにした機内食を展開していますが、一時期ロス対策で品数を減らしたこともあり長続きはしていないかなという印象です。これはこれで面白いとは思いますが永続性、普遍性という意味ではやがて限界が見えてくるかもしれません。
他に特徴的なのはターミナルのつくり。厳密には航空会社ではなく空港の管轄なのですが、これは2015年に開業した成田空港第3ターミナル。搭乗口は建設コストを抑えながらも、日差しや雨や寒さを避けるための幌があります。LCC専用ターミナルとして航空会社や利用者からの要望を反映した結果のようですが、正直に言って「安っぽい」印象です。
ジェットスターやバニラエア等が使用しますがPeachは第1ターミナルを使用します。
一方関西空港の第2ターミナル。2012年の開業から2017年の拡張までPeach専用だったこともあり同社の意向が大きく反映されています。搭乗橋はおろか屋根もない吹きさらし。ランプバスやプッシュバックカーを置かないことでコストダウンと折り返し作業を簡素化させる意図があります。「冬寒い」「雨だと濡れる」という問題もありますが、それを打ち消すくらい「オモロイ」のも確かです。
何より簡素化、簡略化というのは需要も設備も乏しい地方路線では不可欠な要素です。放っておいても客が集まる東京発着路線では身につかない感覚ともいえます。
こういった全方向的に「関西色」を出していく姿勢が、合併で規模を拡大しても変わらずにいられるかに注目していきたいところです。
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