カレコで試乗+購入補助キャンペーンの狙い。高級車の暴走オーナー排除が目的?
三井不動産リアルティが運営するカーシェアリングサービスCARECOが最近になって輸入車ブランドとタイアップして購入補助金を交付するキャンペーンを行っています。一見対立しそうなカーシェアリングとマイカーですが、背景には高級車メーカーのとあるブランド戦略があるように見えてきました。
1.とある煽り運転の車が試乗車だった件
2019年7月から8月にかけて発生した連続暴走暴行事件が報道されましたが、この車のナンバーがディーラーの試乗車であったことが話題を呼びました。
参考:煽り運転で5発殴打のBMW X5が試乗車だった!一定期間、神奈川県内の販売店が男に貸出し。ネットで騒動の事件
例の煽り運転BMW X5って横浜三ッ沢支店の新型の試乗車やったんかい
よう人の車で暴走できるわ pic.twitter.com/DbRRuJA0t2— コンタクト9 (@kontakuto9_fk8) August 13, 2019
ここ最近他者(他車)を巻き込む自動車の暴走運転の報道が目立つようになりましたが、同時に注目されたのが加害者が数日間にわたって車を借りられたことです。一般にディーラーでの試乗はスタッフ同伴で販売店の周辺を数十分走り回るだけのことが多いので、その貸出期間の長さに驚いた人も多いはずです。
また過去には2008年6月にもメルセデスベンツの高級ラインAMGの試乗イベントで150km/hで暴走し歩行者をはねる人身事故が発生しており、運転手と同乗していたセールスマンが実刑判決を受けています。
参考:ベンツの試乗車を運転中に事故(リンク先ページ内の報道記事は掲載期間終了)
2.一部車種にある数日~数週間の長期試乗モニター
10年ほど前からBMWは長期試乗モニターと称して数日~数週間にわたる長期貸し出し試乗を行っていました。購入・キャンペーン応募歴の無い個人が対象で抽選を行い、車庫を確保するなどの条件付きで貸し出します。
2019年8月現在開催されているのものは24時間と短いですが、長時間のドライブや自宅での車庫入れ等、マイカー購入を前提としたポイントが一通り把握できそうです。
最近はマツダなども同様のキャンペーンを行っているようです。
参考:神戸マツダ平日最大5日間ウィークデイモニター(兵庫県民対象)
3.カーシェアリングとマイカーは相反するものなのか
確かに、一般的には車を必要な時だけ料金を払って利用するカーシェアリングと、車を購入することは相反するものと考えられています。事実私自身マイカーを手放しカーシェアリングに切り替えたことで固定費の大幅圧縮に成功しています。
参照:マイカーを捨ててカーシェアリングにしてわかったメリット。固定費97%カットで憧れの車に乗る。

CARECOの会員が対象車種を購入すると10万円プレゼント。
しかし一方で「購入に向けた第一段階」として別のアプローチを仕掛けているのがCARECOです。メルセデスベンツやジャガーといった珍しい輸入車の最新モデルを積極的に導入し、会員向けの新車購入補助金キャンペーンも行っています。
言い換えればこれまでディーラーで申し込んでいた試乗をカーシェアとして行い、気に入ったら購入してもらおうという販売促進手法とも見て取れます。
ユーザー側のメリットとしては、
- カーシェアなら気軽に利用しやすい
- 平日夜間などいつでも利用できる
- いきなりディーラーの門をくぐるのは敷居が高い
- ディーラーから勧誘の電話やメールが来ない
といったように気軽に試乗出来て、なおかつしつこい勧誘が来ない点が挙げられます。
一方でディーラー側のメリットとしては、
- 各店舗に試乗車を用意する必要がない
- 試乗予約の受付から同乗まで人員が不要
- 試乗だけが目的で購入意思のない顧客の排除
- 来店客=購入意思があるとなれば成約率が高まる
など車両や人員のやりくりの効率化、エンゲージメント率向上による省力化高効率化が期待されます。
4.カーシェアリングは会員制。暴走オーナーを事前排除できる?
ここにきてもう一つメリットとして浮上してきたのが「悪質運転や犯罪行為を目的に車を利用する者の事前排除」という点です。
多くのレンタカーやカーシェアリングは、会員規約で他社含め複数回の重大事故や犯罪行為、重大な規約違反を繰り返す会員を退会処分・入会拒否できると定めています。要は業界のブラックリストがあるわけです。
勿論自動車ディーラーも試乗では免許証の確認はしますが、レンタカーやカーシェアリングとは異なり過去の運転経歴までは知ることは無いでしょう。あくまで法律上運転資格があるかを確認するに過ぎません。
つまりカーシェアリングの会員制度を通じての購入であれば、交通違反が多かったり自動車を利用した犯罪歴のある者をフィルターにかけることが可能です。高級車メーカーにとって安全とブランドを守ることにも繋がるでしょう。
もちろんCARECOで借りられる車も場所もいたって限定的であり、車の新規購入者でもカーシェアリング会員はごく僅かでしょう。10万円の補助金も1000万円の高級車を買うには端数程度にしかなりません。
それでも危険ドライバーを排除する一つの手段として、この取り組みは今後に期待したいものです。