中央線特急も全席指定席へ。ネット>駅>車内の順に料金が変わる合理的な方式へ。
新宿から甲府・松本方面を結ぶ中央線特急あずさ号/かいじ号の座席指定制度と料金体系が大きく変わります。既に常磐線特急で採用されているような全席指定席として販売し、未指定の場合は売れ残りの空席に座ることになります。
参考:http://www.jreast.co.jp/press/2018/20181019.pdf
- 2019年春に全列車E353系に統一
- 自由席と指定席の区分が無くなり料金も統一
- 中距離電車グリーン券のように車内精算割増を新設
- 短距離では値上げもグリーン車は値下げ?
- えきねっとトクだ値拡充も公式に発表
- 近距離はえきねっとチケットレスサービスも
- 古い予備車での供給調整から価格差での需給調整へ
1.2019年春に全列車E353系に統一
現在新宿から甲府・松本方面に向かう特急列車は2017年導入のE353系と2001年導入のE257系の2種類で運用されていますが、これをE353系で統一することになります。
参照:【山梨紀行’18①】新型E353系になった特急かいじ105号新宿→勝沼ぶどう郷駅乗車レポ。えきねっとなら35%割引。
さらに臨時列車として旧国鉄時代の189系も用意されていましたが近年急速に出番が減りつつあります。
2.自由席と指定席の区分が無くなり料金も統一
品川~水戸・いわき方面を結ぶ常磐線特急ひたち号/ときわ号と同様の制度が導入されます。現在のあずさ号/かいじ号には、
- グリーン車(1両)
- 普通車指定席(4~8両)
- 普通車自由席(3~4両)
の3種類が用意されていますがこれを
- グリーン車(1両)
- 普通車指定席(残りの8両もしくは11両)
の2種類に。普通車は全て指定席として販売することにして、予約可能な席数を2倍以上に増やしています。
では座席指定をしないと乗れないのかというとそうでもなく、予約を受けてない空席に座ることもできます。ポイントは座席指定をしてもしなくても料金は同じになったという点です。座席未指定で購入してあとから座席指定をすることも可能です。

E353系には空席表示ランプがある。現在は未使用。
ではどのように空席か予約済みか判断するのかと言うと、座席上のランプで見分けます。赤色の空席表示なら自由席同様に誰でも座れますし、緑色なら予約済み。黄色なら途中駅から予約客が乗ってくると3種類の表示があります。
また従来普通車指定席のみに存在する繁忙期/通常期/閑散期の料金格差を廃止し、通年毎日同一料金とします。これは常磐線特急やモバイルsuica新幹線と同様です。
3.中距離電車グリーン券のように車内精算割増を新設
従来は座席指定の有無で料金が変わっていましたが、新制度では新たに車内精算料金を設定。全区間において駅窓口や券売機での発券より260円高くなっています。言うなれば乗務員が運行中に対面で徴収する「手数料」と考えられます。
既に東海道線や高崎線など首都圏普通電車グリーン車で導入されている事前料金と車内料金と同様の仕組みです。これも駅券売機で買うより車内で買うほうが260円高くなっています。
4.短距離では値上げもグリーン車は値下げ?
発表された新しい特急料金。50kmまで(新宿~八王子など)の短距離は現行自由席510円からの値上げですが、元々は2001年短距離利用促進のために首都圏の50kmまでの自由席特急料金を620円から500円(2014年から510円)に値下げしたことの名残り。再び長距離向けに舵を切ることに。
一方グリーン車も従来の特急料金+グリーン料金という体系からグリーン車特急料金へと変更され、普通車との料金格差は縮まっているのが特徴です。その差は100kmまでなら僅か510円とかなりお手軽。201km以上(新宿~岡谷など)だと一気に2000円以上差がつくのは面白いところです。
5.えきねっとトクだ値拡充も公式に発表
公式発表された料金表をもとに運賃+特急料金の比較をしてみました。新料金では現行自由席より高くなりますが、駅購入なら現行指定席より安くなります。一方で車内精算の場合現行自由席より数百円高くなります。
併せてえきねっと割引も発表。JRが新サービス導入を発表した場でオンラインならさらに安くなると発表するのは珍しく、オンライン優遇の姿勢が見えて取れます。
運賃+特急料金に相当するトクだ値と13日前の深夜1:40までの購入が条件のお先にトクだ値が用意されます。現行のトクだ値35より新料金お先にトクだ値30のほうが割引率が低いのに安いのはベースとなる指定席料金自体が値下げされているからです。ただ出発2週間以内の購入に限れば実質値上げとなってしまいます。
6.近距離はえきねっとチケットレスサービスも
えきねっとには更に特急料金部分のみを購入するえきねっとチケットレスサービスが既に総武線・常磐線方面で実施されており、これを中央線にも導入するようです。割引は100円と渋いものの、出発直前まで購入可能、特急料金のみの購入で定期券やsuica等と併用を想定したもの。
この点は通勤等ヘビーユーザー向けです。長距離での購入もできますが実質的に新宿~八王子といった通勤通学利用向けと言えます。それでも現行自由席や最近出てきた京王ライナーや拝島ライナーといった私鉄の有料着席保証列車よりは割高。それに対応してか導入直後にキャンペーンを示唆する表現もあります。
運賃に関しては高尾以東の電車特定区間では紙のきっぷよりIC乗車券のほうが安く、一方郊外区間のみではIC運賃のほうが高くなる傾向があり、チケットレスサービスはsuica区間向け、トクだ値はそうでない遠距離向けと言えそうです。
7.古い予備車での供給調整から価格差での需給調整へ
永らく中央線の長距離列車は定期運用を抜けた旧型車を繁忙期にのみ臨時列車で稼動させる方式を取っていました。2002年頃までは169系等の旧急行型電車が臨時急行やホリデー快速に入り、その後は定期特急をリタイアした189系が臨時特急やホリデー快速に入るケースが目立ちました。
しかし稼働率の低い古くなった車両のために車庫や整備部品や人員を確保するのはもはや合理的でなくなったことも確かです。車種を1種に統一して効率的に運用し増便すること、限られたダイヤで指定席販売数を上げて収益を稼ぐ策に出たと考えられます。

窓口1人、ゲートの無い簡易suica改札、券売機1台とシンプルな駅も。
限られたリソースというのは車両に限らず駅や人員も同様です。数百人の乗客をわずか数人の乗務員で検札、精算を行うのはかなりハードです。また勝沼ぶどう郷駅や富士見駅のように1日の利用客数が1000人を割り、窓口1人券売機1台、改札も簡易suica機のみというシンプルな駅もあります。
そこでチケットの販売から改札までを含めた流れもオンライン化、非対面化を進め、原則指定席として需要を予測し、より少ない人員と時間で行う方法に変わったと言えます。先述の車種1本化とあわせて航空会社特にLCCに近い手法に切り替わると実感しました。